手の洗いすぎ、消毒のしすぎは感染リスクを高める恐れもある | きたざわ歯科 かみあわせ研究所
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手の洗いすぎ、消毒のしすぎは感染リスクを高める恐れもある


https://mi-mollet.com/articles/-/23726

手の洗いすぎ、消毒のしすぎは

感染リスクを高める恐れも

#コロナとどう暮らす

本間 真二郎本間 真二郎

新型コロナウイルスの感染予防といえば、まずは手洗いに消毒です。が、その手洗いの頻度、つまり洗いすぎや、消毒のしすぎによっては、「かえって逆効果になる可能性がある」ということをご存知でしょうか。書籍『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫』の著者で、小児科医・ウイルス学研究者である本間真二郎さんにお話を伺いました。
[接触感染を防ぐには、まず手洗い。けれど……
手洗いや手指の消毒は、ウイルスの接触感染を防ぐのにとても有効です。皮膚は粘膜ではありませんので、傷がない正常な皮膚は、特殊な病原体でなければほぼ完璧に感染(体内への侵入)を防ぎます。
接触感染では手を介した場合がもっとも多くなりますので、手についても感染する前に手を洗う、消毒することで感染を防ぐことができるのです。通常は石けんを使って洗うことが多いでしょう。
手指の消毒も外出先など、手が洗えない場面では欠かせません。
今回の新型コロナウイルスは、インフルエンザと同じようなウイルスです。石けんやアルコールにはある程度の効果があると考えられます。
ですから、感染予防の基本として、「石けんで手をよく頻回に洗い、さらにアルコールで消毒する」という方法が推奨されているのです。
しかし、そのいっぽうで、手洗いをしすぎる、石けんを使いすぎる、消毒をすることで、むしろ感染のリスクを高くするという考え方もあります。

「手を洗い、消毒するほうがいいのか?」
「手をあまり洗わず、消毒もしないほうがいいのか?」

じつはどちらも正解なのです。

身の回りの微生物をなくすと、バリア機能が失われる
手洗い、消毒するということは、病気をおこす病原体(今回の場合は新型コロナウイルス)を積極的に攻撃して排除して防ぐ効果がある一方、過度な石けんの使用や消毒は、皮膚に存在する常在菌にとっては大きなダメージにつながります。

常在菌とは、自分のからだの内側と外側に存在する細菌や微生物の総称です。
本来、人のからだの内も外も微生物だらけであり、たとえば腸内細菌は約100兆個も存在しています。人はそれらの微生物と共存している生物です。
そして、それらの微生物が人の健康にとってもっとも大事なのです。

たとえば、自分のからだを守るのが免疫の働きですが、この免疫のシステムは、生まれてから毎日毎日、自分の身のまわりの微生物とコミュニケーションをとりながら成長、完成、成熟しています。その微生物を排除しすぎることは、自分のバリア機能をみずから下げていることにもつながるのです。

つまり、感染予防やあらゆる健康にとって、通常の皮脂や常在菌がとても大切であるという点では、なるべく手洗いや消毒をしないほうが自分の防御力を上げるという考えになります。
身のまわりの微生物をなくすことは、自分のバリアを失うことであり、ちょっとした軽い感染や新規の感染症に対して免疫力、抵抗力を失ってしまうのです。
これが失われたことによる免疫系の機能異常が、新しい感染症の出現とその対応能力が低下している最大の理由──と私は考えています。
手洗いも消毒も、必要最小限に

では、これからの私たちは、実際にどう行動すればいいのでしょうか。
私は、通常の日常生活ではなるべく不自然なことをせずに、粘膜や環境の防御が大切であると考えています。つまり、手洗いも消毒も必要最小限にとどめています。

◉外出先から帰宅したとき。
◉食事をつくる前や食べる前。
◉トイレのあと。
◉あきらかに汚れた場合……など

これはコロナが流行する前とあまり変わらない、と思われる方もいるかもしれませんが、それでいいのです。
また、ドアノブなどの消毒も普段は行っていません。健康な人は心配しすぎないことが大切なのです。

ただ、現代人の多くが常在菌などのバリアをすでに失っていることや、コロナ感染症の第二波や第三波を考えると、それなりの注意と対策は必須になります。

うがいの消毒液は有効か?

もう一点、口の中の消毒、つまりうがいはどうでしょうか。
これもあまりおすすめはできません。消毒液を使ったうがいをしても、表面の菌やウイルスにしか効果はなく、また完全に除去することはできませんので、うがいの感染防止効果はほとんどないと思います。

たくさんある消毒液のなかで粘膜(口の中)に使えるのはポビドンヨード(商品名=イソジンなど)くらいしかありません。ポビドンヨードは殺菌効果や抗ウイルス効果はあるのですが、粘膜を傷め、常在菌や環境にも大きな影響を与えますので私はおすすめしていないのです。

最大の感染予防対策は普段から免疫力、抵抗力を上げておくことにつきます。
すべては腸内細菌を元気にする生活に集約されるのです。]

本間 真二郎Shinjiro Honma

小児科医、ウイルス学研究者。1969年、北海道札幌市に生まれる。札幌医科大学医学部を卒業後、札幌医科大学附属病院、道立小児センターなどに勤務。2001年より3年間、NIH(アメリカ国立衛生研究所)にてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。2009年、栃木県那須烏山市に移住し、同市にある「七合診療所」の所長として地域医療に従事しながら、自然に沿った暮らしを実践している。近著に『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫』(講談社)がある。

<新刊紹介>
『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫』
(講談社)
定価:1650円
著者:本間真二郎
ISBN 978-4-06-520424-5

「感染しない」「発症させない」「重症化させない」――新型コロナからあなたと家族を守るためにもっとも大切なことは、「免疫力」と「自然治癒力」を生活のなかで高めていくこと。米国のNIH(アメリカ国立衛生研究所)出身のウイルス学研究者で那須烏山の自然派医師が実践する自然に沿った暮らし方で、感染を遠ざけ、万一感染しても追い出す力を備える。