『「国際経済の今後の動き」(2022年11月講演会内容を2023年4月の現状に合わせて・・)』
『「2056」 昨年にある集まりで行った、副島隆彦の講演の内容を掲載する(第1回・全2回) 2023年4月24日
副島隆彦です。今日は2023年4月24日です。
今回から2回に分けて、私が昨年(2022年)11月にある集まりで行(おこな)った講演の内容を掲載します。講演の演題は「国際経済の今後の動き」です。講演から半年ほど経過していますが、内容に加筆修正を加えました。
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演題「国際経済の今後の動き」
●32年ぶりの円安水準も138円台まで戻した
先月、10月21日、円相場は一時1ドル=151円台まで値下がりしました。これは1990年8月以来32年ぶりの円安水準です。急激な円安進行によって、物価上昇や企業の業績悪化なども心配されています。ただ、相場は10月21日を境に円高へと転じました。今は138円台で推移しています。今後は120円台まで戻すと私はみています。
最近の円ドルの動き※
1ドルが180円とか300円になるという、でたらめな予想をする専門家や市場関係者もいました。「米国は強いので米国債を買え、日本は駄目だ」と言う悲観的な声も多くありました。しかし円安で日本経済が危ないという局面は脱しました。「円安(ドル高)だ」という声は消えてゆきます。
日本円だけではなく、他国の通貨安も相次いでいました。ユーロは1ユーロ=1米ドルの「等価」を割り込みました。また、英国のポンドも今、1ポンド=1・1ドルくらいです。もしかしたら1ドルを割るかもしれません。英国ではリズ・トラス(Liz Truss、1975年-、47歳)新政権が打ち出した大規模な減税策と国債増発計画をきっかけに財政悪化懸念が強まったので、ポンドが急落しました。その責任を取り、トラス首相は就任からわずか45日で辞任しました。
リズ・トラス※
このポンド危機がやがてアメリカに波及してドル危機になるでしょう。アメリカで銀行破綻などの信用不安(金融恐慌)がやがて起きます。かつては「大英帝国」として19世紀(1800年代)には世界の3分の1を支配した英国ですが、いまや人口6800万人の貧乏国といわれています。英国で力があるのは国家の秘密情報部MI6(エム・アイ・シックス)だけです。ロシア・ウクライナ戦争でもウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy、1978年-、45歳)大統領のすぐ横にいて毎日「これをやれ」と命令しているのは、この英国のMI6です。
ウォロディミル・ゼレンスキー※
●強い米国に盲従(もうじゅう)する時代は終わった
ドル円為替相場の推移をたどると、1ドル=75円の時代がありました。今から11年前の、2011年10月です。その前リーマン・ショックが起きた2008年当時、円は「安全な資産」と評価され、1ドル=110円でした。NY発のリーマン・ショックを受け、「有事の円買い」で瞬く間に1ドル=100円を割り込み、75円まで上昇しました。何と、2011年の「3・11」の東日本大震災のあとなのに日本の信用はもの凄く強かった。
1980年からの円ドルの動き※
しかし、このあと2012年以降は、円安基調が長く続き、結局151円まで下がりました。日本の主婦やサラリーマン投資家が昼休みを利用して「円売り・ドル買い」を進めたこともあり、相場が大きく動き、市場でも注目を集めました。英国の経済誌は、彼らを日本人に多い名前を冠して「ミセス・ワタナベ」と呼んでいます。
円安ドル高の影響で、輸出や輸入を生業としている人は大変だといわれています。だけど先見性があって、正しい判断ができる経営者は、もうすでに海外に工場をたくさん持っています。日本と海外工場、海外の取引先などの間で、国境を越えて製品や原材料のやり取りをしています。だから為替は動かさないでくれというのが本音です。ただし、1億円、2億円の決済資金を日本国内でドル預金で持っている経営者もたくさんいます。
彼らは「副島先生、ドル暴落などと煽らないでほしい。現実にそうなったら、私たちは損をする」と泣き言を言っています。長年、米国を信仰し、盲従している人たちは、円安を歓迎しています。「米国は強い。その強い米国について行けば日本は大丈夫だ」と信じ切っています。私は正直に申しまして何をいつまでそんな馬鹿なことを言っているんだと思います。
●株式投資には会社見極める目が必要
2022年1月5日に、ニューヨーク(NY)ダウ工業株30種平均は終値ベースで史上最高値を更新しました(3万6952ドル)。一方、日本の株式相場は30年前のバブル経済期にピークでした。33年前の1989年12月29日、日経平均株価は3万8957円44銭の史上最高値をつけました。その後、日本は土地価格の下落によって、本格的なバブル崩壊が始まり、株価も急落しました。2000年のITバブルなどで2万円台を回復した時期もありました。イラク戦争(2003年)やSARS(サーズ。重症急性呼吸器症候群)の流行によって、2003年には日経平均は8000円を割り込みました。2012年以降はアベノミクスによって相場は比較的安定して推移し、2022年末の今は2万3000円台まで持ち直しています。
ダウ平均株価(赤線)と日経平均株価(青線)の動き※
現在、NYダウは3万3000ドル台で推移しています。米中貿易戦争が2018年に始まって相場が落ち込み、再び回復基調に入ったかと思うと、今度はコロナウイルス騒ぎが起きて(2020年1月)、2020年3月に暴落して、1万8000ドル台まで下がりました。そして今年の年初にピークの3万7000ドル寸前を付けました。しかし9月には2万8000ドル台まで急落しています。
短い期間で、これだけ相場が大きく動くと、年金の運用なども株式市場でやっています。だからリスクが大きくなっており、危ないと言えば危ないです。ただ、優れた経営者がいて、独自の技術があって、堅実な経営をしている上場企業はたくさんあります。しっかり企業の良しあしを見極める目があれば、株で儲けることもそんなに難しいことではないでしょう。
●複雑な仕組み債での損失には注意
近年、大きな株価変動により、個人投資家が「仕組み債(structured bonds、ストラクチャード・ボンド)」で大きな損失を出す事例が相次いで、問題になっています。仕組み債は、売り手の銀行や証券が、先物やオプションなどのデリバティブ取引という複雑な仕組みを加えることによって、一般的な債券よりも高い金利を受け取ることができると謳(うた)っているのが特徴です。「年率20パーセントの高利回りを約束します」とか。
仕組み債の仕組み※
ところが、商品内容が複雑で、リスクが大きいにもかかわらず、表紙は「安全な債券」に見せかけて販売している売り手も見受けられます。大手銀行も地方銀行も売っています。それにより、大きな損失を抱えて販売元などとトラブルになっているケースが少なくありません。
仕組み債では、ある時期に、ある商品を、ある価格で売ったり、買ったりするという権利の取引が行われます。あらかじめ決められた行使価格で商品を買う権利のことを「コール・オプション(call option)」、先値で売る権利を買うことを「プット・オプション(put option)」といいます。ところが多くの場合、単純なプット・オプションではなく、ノックイン(knock-in)という付加条項(ノックイン事由の発生)があります。ノックインした場合、契約時に設定した水準まで株価や指数が下落すると、それ以降は損失が膨らみ続け、最悪、元本がゼロになります。これには注意が必要です。
金融庁は仕組み債の取り扱いについて監視を強めています。裁判所や金融ADR(金融分野における紛争解決制度)による解決が進められます。しかし大損した投資家を、実際上、金融管理局や裁判所は救済しません。「投資し、買ったのはあなたです」と。大きな損失を出した購入者が、販売元の銀行や証券会社と争った裁判では、販売元の説明不足を理由に購入者側が勝訴する事例がほんのわずかだけあります。しかし大半は購入者が仕組み債のリスクを十分理解していないことが損失につながった、として訴えた方が負けるケースがほとんどです。投資は自己責任が原則であることを忘れてはならない。
●打倒プーチン目指す米英はウ軍を支援
2022年2月24日、ロシアはウクライナへの全面侵攻を開始しました。英国、米国はプーチン大統領を叩きつぶしてやると、ウクライナ軍を支援し、最初の2カ月で勝利を収め、戦争を終わらせる計画でした。しかし、ロシアを屈服させることはできませんでした。8月まで戦線は膠着状態が続いていました。9月に入ってウクライナ軍が反転攻勢に出て、南部ヘルソン州では州の北東部から南西部にかけて流れるドニエプル川までで、ロシア軍は停止しました。10月にはロシア軍が新兵30万人の招集を終えたと明らかにしています。
ウクライナ戦争の地図(2023年4月19日)※
ウクライナ軍も約20万人といわれる正規軍に、民間人を中心に組織した部隊や準軍事組織、警察などを加えて、100万人の兵力で対抗している状況です。停戦の兆しは見られず、戦争の長期化は必至です。一旦は中国の仲裁で停戦(シース・ファイア、cease fire)しますが、また破られる、ということになるでしょう。
●日露戦争勝利の裏には英国の存在が
英国と米国は、ロシアと歴史的な敵対をして、NATO(北大西洋条約機構)加盟国と共に武器供与や情報提供を続けており、ウクライナ軍によるロシアからの支配地域奪還を後押ししています。米国と英国は、同盟国である欧州各国を戦争支援に引きずり込んで自分たちの食い物にするために、ロシアとウクライナの戦争を続けさせている。この戦争で、米軍や欧州各国の軍人、兵士が犠牲になることはありません。しかし隠れて志願して戦死している米軍の将校やポーランド人の義勇兵たちはいます。
ウクライナ軍には海外の各国からの志願者による義勇兵(ボランティーア、voluteer)が数多く参加しています。この他に、PMC(ピー・エム・シー、Private Military Company、民間軍事会社)の雇兵(マーシナリー、mercenary)たちが、古参兵(ヴェテラン、veteran)として戦っています。ウクライナ兵の教官としてテクニカル・アドヴァイザーズ(technical advisers、軍事指導員)として入っている米軍の特殊部隊もいます。後方基地にまでロシアの精密誘導ミサイルが飛び、米軍出身者も将校クラスが3000人命を落としています。
日露戦争(1904~5年)もロシア・ウクライナ戦争と全く同じ構図です。日露戦争は全て英国が仕組みました。日露戦争の2年前の1902年に、日英同盟が締結されます。日英両国は中国や韓国における権益を相互に認め、アジアにおけるロシアの進出に備えることを共通の目的としていました。ロシアは日露戦争開戦以来の劣勢を挽回するため、バルト海から遠く極東のウラジオストクと旅順港にバルチック艦隊を派遣します。その際、英国が支配するスエズ運河を使用させず、アフリカ回りをさせ、各地での英国の植民地の港での石炭補給も邪魔しました。
バルチック艦隊の航路※
日本海海戦で旗艦を務めた戦艦「三笠」など連合艦隊の主要艦艇の多くは英国製でした。連合艦隊を率いた東郷平八郎(とうごうへいはちろう、1848-1934年、86歳で死)は英国に留学経験があります。海戦を実際に指揮したのは、イギリス海軍のエースの大佐たちでした。観戦将校の資格で乗り込んでいた。ロシアのバルチック艦隊は、長距離の遠洋航海で日本海にたどり着くころには疲れ果てていました。英国の思惑通りに事は進み、待ち伏せした日本の連合艦隊は日本海海戦でバルチック艦隊を破り、日露戦争で勝利を収めます。全ては仕組まれていた。全てイギリスの世界戦略です。極東(ファー・イースト、Far East)の日本をロシアにぶつけて戦わせろ、イギリス軍を派遣する必要はないということです。この流れで、その次は、日本と中国を戦わせろ、となります。調子に乗って大きく騙された日本は、第二次大戦で敗戦しました。
●米短期金利上昇は4・5%が限界か
政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、中央銀行が設定する短期金利(1年もの以下)のことです。日本の場合、金融機関どうしが無担保で資金を融通し合い、翌日には返済する取引にかかるコール金利を先行指標としています。一般に、景気がよく物価が上昇する局面では、短期金利は上昇し、景気が悪くなり物価が下落する局面では低下する傾向があります。また、短期金融市場の資金量が増えれば、短期金利は低下します。反対に資金量が減れば金利は上昇する傾向があります。このため、中央銀行は市場で国債や手形などを買い取ったり、売却したりすることで、短期金融市場での資金量(マネタリー・ベース)を調節し、短期金利を一定の水準に誘導します。
米国は2022年3月、2年間続いたゼロ金利政策を解除し、政策金利をどんどん引き上げ始めました。今月(2022年11月)、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、記録的なインフレが続いていることを理由に、短期金利を0・75%引き上げ、4%にすると決定しました。1回の利上げとしては通常の3倍の上げ幅で、今回を含め4会合連続で0・75%引き上げる。これは異例です。
アメリカの政策金利は急上昇※
今後、どこまで利上げを進めるか、が焦点ですが、4・5%が限度でしょう。202212月のFOMCでは上げられないと私は思います。ここで上げたら景気は冷え込み、米国株は暴落します。来年2月のFOMCで、0・5%上げることができるかどうか正念場でしょう。
●日銀黒田総裁の量的緩和維持は正しい
欧州中央銀行(ECB)も今月から、ようやく2%まで金利を上げました。日本は0・1%のまま、地べたをはっています。「ゼロ金利を続ける」と黒田東彦(くろだはるひこ、1944年-、78歳)総裁が、頑固に主張しています。日本は欧米と一線を画し、量的緩和政策(QE キュー・イー、クアンティテイティヴ・イージング、Quantitative Easing)を続けています。私は黒田総裁の決断は正しいと思います。米国の短期金利(政策金利、FFレート)が5%に到達することはないでしょう。
日米欧政策金利の推移※
FRBのジェローム・パウエル(Jerome Powell、1953年-、70歳)議長は、「私が金利を上げる判断をして、インフレを抑え込むことで家計や企業に痛みをもたらすことになる。しかしそれは避けられないコストだ。物価の安定を取り戻すことに失敗すればもっと大きな痛みを伴うことになる」と語り、金融引き締めについて「やり遂げるまでやり続けなければならない」と宣言しました。しかし、このまま金利を上げ続けると株価と債券(米国債が中心)が暴落します。
日本の長期金利の指標である、10年ものの国債の利回り(イールド)は、今、0・25%を割り込んでいます。これが0・3%になったら日本国家は危ないという説があります。0・5%がギリギリ限度だ、と。1200兆円という公表されている財政赤字だけでも、金利が1%上がると、その支払い分だけで年間12兆円増える試算になります。
だから、金利はゼロを続けざるを得ないのです。日本銀行の黒田東彦総裁は、米国の言うことを聞くふりをして、”異次元”といわれた量的緩和政策(QE)を続け、10年かけて年率2%の物価上昇の目標値も達成しました。本当はエネルギー(原油と天然ガス)の輸入代金が物価を押し上げたからです。この意味でも、黒田総裁の金融緩和をやめない、金利を上げないという政策判断は間違っていないと私は高く評価しています。黒田東彦は来年4月に、立派な引退の花道を飾るでしょう。
(つづく)
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「2057」 ある集まりでの私(副島隆彦)の講演の内容を掲載する(第1回・全2回) 2023年5月1日
副島隆彦です。今日は2023年5月1日です。昨年にある集まりで行った講演の続きです。
●日露戦争では外債発行で戦費調達
米国は米中央銀行(FRB)に発行させたお金でウクライナを支援して戦争をやらせています。米財務省は米国債をこれでもかこれでもかと発行して、それをFRBに買わせて、貨幣と交換しているだけです。中央銀行が、政府(財務省)の国債を直接引き受けるのは、極端なインフレを起こす恐れがある。
FRBが保有する米国債の推移※
多くの国では中央銀行の国際直接引き受けが禁止されています。米財務省は当然、政府組織ですが、「FRBは株式会社です、民間企業です」というふりをさせて、ここに国家借金(米国債)を大量に引き受けさせて、FRBを利用しています。やってはいけないことをやって、世界経済は成り立っています。
日露戦争のときの日本の戦費調達は異なりました。当時、日本銀行副総裁だった高橋是清(たかはしこれきよ、1854-1936年、81歳で死)はロンドンに赴き、英国ロスチャイルド銀行の資本家と交渉の末、500万ポンドの日本政府発行の外債発行を引き受けて貰いました。
ジェイコブ・シフ(左)と高橋是清※
さらに在英中だった米国のクーン・ローブ商会の銀行家ジェイコブ・シフ(Jacob Henry Schiff、1847-1920年、73歳で死)と知遇を得て、ニューヨークの金融街による500万ポンドの戦時国債を引き受けてもらった(1904年5月)。これによって日本国債という、信用のない、貧乏な東アジアの国の債券を引き受けてもらうことができました。こうやってロシアとの戦争にも勝った。勝ったからこそ、戦勝国として債券の償還に対応できました。ロシアからは満州の鉄道事業などの権益を獲得しました(ポーツマス条約1905年8月)。もし、戦いに敗れていれば、債券は何の価値もない紙くずになったでしょう。
●住宅ローン債券の買い取りはやめられず
米国の長期金利(10年ものの米国債)は2022年10月24日に4・25%まで上昇しました。直近では3・8%くらいまで下落しています。長期金利は住宅ローンに連動します。米国の住宅ローン金利は6~7%で推移しています。かなり高いです。日本はマイナス金利政策により、住宅ローンも変動金利で0・5%という低い水準です。米国債が暴落したら、全ての金利がはね上がります。まだ3・8%だから大丈夫だと言っていますが、これを政策金利の上げが突き上げますから、長期金利が4%を超すと危ない。
アメリカの政策金利の推移※
新型コロナウイルス危機(2020年1月)以降、FRBは量的緩和政策の一環として、住宅ローン担保証券(MBS)の買い取りを進めてきました。現在は金融引き締め(QT、Quantitative Tightening、クアンティテイティヴ・タイトンニング)に転じたので、政策金利も上げていますが、MBSの買い入れはやめられない状況です。分かりやすくいうと、本来ならばとても住宅購入資金を融資(住宅ローン)できないような所得の低い世帯に貸した住宅ローンがまだ大量にあります。
リーマンショックのあとも残り続けている。金融機関がまとめて証券化したものをファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の政府系住宅金融会社が購入した。これらをさらに救済措置として、結局はFRBがファニーメイ(Federal National Mortgage Association、Fannie Mae、連邦住宅抵当公庫)やフレディマック(Federal Home Loan Mortgage Corporation、Freddie Mac、連邦住宅抵当貸付公社)などからこれらの住宅ローン担保証券(MBS)を買い取っています。これをずっと続けています。
●住宅バブル加熱で家を追われる人も
米国では、今、大企業上層サラリーマンや税理士、医者といったミドルクラスの連中が、個人住宅を4~6億円(300万ドルから600万ドル)で売り買いしています。1億円(190万ドル)で買ったものが5億円で売れてもうかったという住宅バブルが起こっています。かつての日本の”狂乱地価”(1988~89年)と同じ状況です。低金利の資金が溢(あふ)れかえっているからです。
FRBのパウエルたちは、これを抑えつけたようとして「インフレだから金利を上げる」と言っているのです。日本国内ではこの事実がほとんど報道されません。YouTubeにはそれらの不動産バブルの動画が上がっています。米国には住宅ローン残高が500兆円(4兆ドル)くらいあります。日本は220兆円です。問題は、このミドルクラスの人たちが借りているローンの長期金利がさらに上昇すると、毎月の支払いができない人々が出てくるでしょう。
投資用で家を購入して賃貸住宅(コンドミニアム)として運用している人も多くいます。何が問題かというと、住宅バブルによって住宅価格が上昇する中で、購入金額があまりに上昇すると家賃も当然上がっていき、家賃の支払いができなくなる借り手層が出てきます。家の借り手からすれば、突然家賃を値上げされて払えないという話です。
日本のように「借地借家法」が米国にはない。ヨーロッパにもありません。賃貸住宅のオーナーは平気で値上げを決めて、入居者に対して「来月から家賃を50万円にします。払えないのなら出ていってください」と通告します。米国民が米国民の首を絞める、そんな状況になっています。
●購買力平価で見ると1ドルは34・1円
購買力平価(こうばいりょくへいか、purchasing power parity、PPP)とは、ある国で、ある価格で買える商品が、他国なら幾らで買えるかを示す交換レートのことを指します。マクドナルドのビッグマックの価格を例にとります。日本では1個410円であるのに対して、ニューヨークで買うと、12ドル(約1600円)くらいです。ここから導かれるドル円の購買力平価は410円÷12ドル=34・1円で、1ドル=34・1円となります。現在の円相場が、1ドル=138円ですから、4倍の差があります。購買力平価で見ると、日本円の力(価値)は、非常に低く見られていて、非常に円安だということになります。
購買力平価の説明図※
副島隆彦は円高論者です。ですから、1ドル120円、100円、80円、60円と、どんどん、これからドル暴落へ向かいます。このことを私はずっと主張し続けてここまできました。151円まで円安が進んだからといって、どうということはありません。円高ドル暴落に必ずなります。強い強いと言われるドルとは何なのかというと、実態は米国債と米ドルの紙切れです。
最近の円ドルの動き※
こんなものを世界中に刷り散らかして、流通させているだけだ。まだ世界中の多くの人たちが、100ドル紙幣をタンスにため込んでいます。しかしある日、こんなものは要らないと、突然、価値がなくなります。ドルと米国債は暴落してしまい、米国は国家として立ち行かなくなる時代が来る、と私はみています。
●23年前1グラム917円だった金は8800円に
2020年8月に、ニューヨーク金先物価格(NY金)は、1オンス(約31グラム)当たり2000ドルを突破しました。今年2022年3月に、再び2078ドルの最高値を記録しました。そこから相場が崩れ、今は1760ドルあたりで推移しています。これは、FRBと米政府と金融グループのゴールドマンサックスが、金の空売りをしかけているからです。とにかく金が憎らしくてしょうがない。「金とドルの戦い」です。米国はドルを守るために、500倍どころか1000倍のレバレッジをきかせて、金の先物(フューチャー)市場で大きな取引をしています。米国政府にはもう金(きん)はありません。
金価格の推移(ドル)※
ニューヨーク連邦銀行が金(きん)を8100トン保有していると言っていますが、そんなものは嘘です。ほとんど貿易決済金として使ってしまいました。全部、中国やインド、ブラジルに流出しています。今は中国が世界で一番多くの金を持っているでしょう。いざというときに、新しい通貨体制を構築するときの土台、元手とするためにどうしても金の地金(じがね)が必要となります。中国同様にロシアもため込んでいて、さらにその量を増やしています。
今、国内の金の小売価格は、1グラム当たり8825円(2022年11月11日現在)です。やがてドカーンと上昇しますから、そのまま持っているのが賢明です。卸し価格に800円プラスしたのが小売価格です。もうすぐ1万円になります。買うなら今でしょう。あとはご自分で判断してください。金の小売価格の推移を1975年から見ると、1979年の第2次オイルショックのときに6000円を突破しました。この時は1ドル240円でした。その後は長く下落基調が続き、1999年9月に、917円となりました。ここが大底でした。それが今は1グラム8800円台まで来ています。今のうちに買わないともう買えなくなるでしょう。
金価格の推移(円)※
●欧米中心の世界体制転換を中露が画策
トランプ(Donald Trump、1946年-、76歳)前米大統領は、2024年に実施される大統領選に出馬すると表明しました。通常、トランプ氏のような成功者は体制側につくものですが、トランプ氏はポピュリスト(民衆主義者)ですから、民衆の声に耳を傾け、彼らを絶対裏切りません。だから私はずっと一貫してトランプ支持です。日本を代表するトランプ応援団です。
大統領選挙出馬宣言後のトランプ※
ですが、トランプ氏は次期大統領選には勝てないでしょう。総投票数2億票のうち、約4000万票が郵便による投票です。前回と同じように投開票システムに手を加えて、大きな不正な投票が行われる可能性が高い。どうしようもない。それぐらいアメリカの反(はん)トランプ勢力は汚れていて、腐りはてている。だからディープ・ステイト(Deep State、陰に隠れた政府)と言います。しかし、不正選挙を許したら、デモクラシー(democracy、民主政治)は成り立ちません。デモクラシーという国家の根幹に関わる部分を毀損させて、米国はよくやっていけるものだという感じです。
だから、やがて米国は国家分裂します。テキサス州を中心に「アメリカ・サウス(America South)」という国をつくり、トランプ氏が初代大統領になるでしょう。あと何年かでこのことが起きます。「ディープ・ステイト(陰に隠れた政府)」は最近「カバール(Cabal)」とも言われます。
欧米のディープ・ステイトがイギリスとアメリカの政府を操って、そして、ウクライナのゼレンスキー大統領を操って、ロシアとの間で代理戦争をやらせています。西側(ザ・ウエスト、the West)対ロシアの戦争です。この西側と呼ばれる欧米白人勢を操っているのがディープ・ステイト=カバールの王族、大貴族と超富裕層の人々です。彼らは、この世(人間の世界)は、神ではなく悪魔(ディアボロー、diavolo)によって支配されているのだ、と考えています。彼らは悪魔崇拝者たちです。こういうことも私は本に書いています。
日本は戦争の放棄を定めた平和憲法を堅持し、米国に核兵器を持ち込まないように、「出ていってください」とはっきりと言える国でなければなりません。今、ロシアと中国を中心に、インド、ブラジル、中東諸国も入って、欧米白人がつくった“きれい事”の世界体制をもうやめてくれ、という流れが生まれています。これが真実です。この大きな真実を知りたかったら、ぜひ私の本を読んでください。
(終わり)
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