任期満了に伴う新潟県の柏崎市長選挙(柏崎市長選)は11月17日に投票が行われ、即日開票の結果、無所属現職の桜井雅浩氏(62)が、共に無所属新人で自営業阿部由美子氏(62)、燕市在住の会社員野本祐二氏(58)を大差で下し、3選を果たした。
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を巡って、桜井氏と野本氏は条件付き容認、阿部氏は反対と、主張が分かれた。2期8年の桜井市政の評価や、子育て・教育施策なども争点となり、有権者は市政の継続を選んだ。
桜井氏は多数の市議や、経済界の支援を受け、組織的な戦いを展開した。運営母体の経営危機に揺れる柏崎総合医療センターを必ず存続すると訴え、実績も強調して支持を得た。
桜井氏は当選確実となった11月17日午後9時前、市内の選挙事務所に集まった支持者約100人と共に万歳。「皆さまのご恩に報いるためにも強く優しい柏崎をつくっていく」と3期目に臨む決意を語った。
阿部氏は再稼働阻止を旗印に戦ったが、原発に反対する層以外への広がりを欠いた。
野本氏は浸透しなかった。
投票率は53・70%で2020年の前回選を9・10ポイント下回り、記録が残る1947年以降で過去最低となった。
▽当日有権者数 6万6016
▽投票者数 3万5448
▽投票率 53・70%
▽無効 498
◇柏崎市長選開票結果(選管最終)
当27、587 桜井 雅浩62 無現(3)
6、931 阿部由美子62 無新
432 野本 祐二58 無新
【桜井氏略歴】市長(学習塾経営、市議4期、副議長、高校教諭)西本町1。早大卒。
◆桜井氏投票の2割超が原発再稼働反対、再稼働問題謙虚に向き合う姿勢を
告示1週間前までは無風になると思われた柏崎市長選は一転、3氏による選挙戦となり、現職の桜井雅浩氏が3選を決めた。新人の阿部由美子氏は東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に反対する「ワンイシュー」で挑んだが、桜井氏は「原発は市政課題全体の中では3分の1以下」と位置づけ、原発に関するお互いの訴えはかみ合わなかった。
桜井氏が大勝したことは事実だ。ただ、桜井氏が条件付きで認める原発再稼働問題は、柏崎市をはじめ県内での議論が乾いているとは言い難い。桜井氏が今回得た票数を、再稼働に進む無条件の「後押し」と受け止めることには疑問符が付く。
新潟日報社が11月17日、市長選の投票所で実施した出口アンケートでも、有権者の原発再稼働問題への関心は高かった。桜井氏に一票を託した人の中でも、原発再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人は2割を超えた。再稼働に不安を抱えつつ、桜井氏を選んだ複雑な心境が浮かぶ。
1月の能登半島地震を受け、柏崎刈羽原発から半径5〜30キロ圏の周辺自治体では、原発事故時の「屋内退避」の運用などについて懸念を拭えないままだ。
今後焦点となる再稼働の「地元同意」を巡っては、態度を明らかにしない花角英世知事に対し、桜井氏が公の場で不満を述べるなど、首長間の足並みの乱れが見えるのも気がかりだ。
桜井氏は大勝したからこそ民意の重みを自覚し、原発再稼働問題を含めたさまざまな課題と謙虚に向き合う責任がある。