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「学生(政治?)運動と過激派」に関連しての情報・総括⑴


「1656」全4回で

『日本会議の研究』の著者、菅野完(すがのたもつ)氏

と副島隆彦の対談を載せます。

「政治運動とは何か」(1)

2017年2月27日

 中田安彦です。今日は、2017年2月27日です。

安倍政権に強い影響力を与えている、保守系団体である「日本会議(にっぽんかいぎ)」の源流と裏側の秘密を暴露した本、『日本会議の研究』(扶桑社)を昨年発刊した、作家の菅野完(すがのたもつ)氏をお呼びして、先月末に副島隆彦先生を囲んで行った対談の記録を載せます。この対談を行って2週間後に、現在安倍政権に激震を与えている、「森友学園(もりともがくえんぎごく)疑獄」が発覚しました。

この問題は大阪の日本会議の幹部を務める私立幼稚園を運営する学校法人が、小学校を建設する土地を入手する際に、異常な格安(9割引き以上)で国有地を売却したという事件です。この小学校の名誉校長には、安倍晋三の妻である昭恵夫人が就任しています。国有地売却を巡っては、安倍晋三周辺だけではなく、安倍政権を大阪で支える大阪維新の会の松井一郎府知事が、土地の取得や小学校の設置許可を巡って、森友学園側に便宜を図ったのではないかという疑いが浮上しています。

菅野氏はこの件の調査に今は大阪に何度も通われています。この問題は、問題をスクープした、「朝日新聞」の記事に詳しく経緯が説明されています。

(記事の貼り付け開始)

国有地売却、首相が弁明 「安倍晋三小」何回も断った
「朝日新聞」(2017年2月25日)

南彰、岩尾真宏 吉村治彦、飯島健太2017年2月25日01時50分

学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題が安倍晋三首相を直撃した。24日の衆院予算委員会では野党が首相の責任を追及。首相は新設される小学校の名誉校長を妻が辞任したことや、自らの名を使った学園の寄付金集めに抗議したことを明らかにして、疑惑の払拭(ふっしょく)に努めた。それでも、売却をめぐる問題は不透明さを増している。

首相はこの日、審議の冒頭から森友学園との関係性を否定しようとした。

「教育者としていかがなものかと相手方に伝えた。何回も断っているにもかかわらず、寄付金集めに(安倍晋三記念小学校の)名前が使われたのは本当に遺憾で、抗議をした」

首相は妻昭恵氏が学園が開設予定の小学校の名誉校長を辞任したことも明らかにし、同学園の籠池(かごいけ)泰典理事長に対して「非常にしつこい」とまで口走った。

17日の衆院予算委で「妻から(籠池)先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」と語った好意的な口ぶりは影を潜めた。質問した民進の福島伸享氏は「先週は同志愛を示していたが、この1週間でだいぶ変わった」と皮肉った。

小学校は「日本で初めてで唯一の神道の小学校」をうたい、系列の幼稚園は明治天皇の名で教育理念などを規定した教育勅語を暗唱させる教育方針で知られる。籠池氏は、憲法改正で首相を後押しする日本会議のメンバーでもある。

首相が追い込まれたのは、国有地の売却手続きの異例さとともに、学園が経営する幼稚園が外国人に対する差別的な言動や教育内容をめぐって保護者らとの間でトラブルを起こしていることが背景にある。

昭恵氏が一昨年、名誉校長を引き受けた際の講演会で「こちらの教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っている。(卒園後)公立小学校の教育を受けると、せっかく芯ができたものが揺らいでしまう」と語っていた映像も明るみに出て、同学園の寄付集めや小学校認可を首相が後押ししているかの印象も強まった。

籠池氏との関係について、首相はこの日、「(予定されていた講演の辞退を)電話で話したことがほとんど唯一に近い」。幼稚園について「私が訪問したことは全くない」「どういう教育が行われているかは文部科学省や大阪府が判断すべきだ」と突き放した。

菅義偉官房長官は24日の記者会見で、「夫婦はみな個人的な考え方で行動しているのではないか」と語り、首相を擁護。首相官邸の幹部は「これで政権が追い詰められるような話にはならない。昭恵夫人がファーストレディーとしては甘かったという程度で終わるだろう」と述べ、政権への打撃を抑えたい考えだ。

しかし、政権幹部が森友学園の問題を把握したのは今月に入ってから。首相が重用する稲田朋美防衛相が籠池氏に感謝状を贈っていたことも明らかに。民進の安住淳代表代行は「政治家の名を借り、総理の威光を背に色々なことを進めてきたのではないか」として、週明けも首相の出席が続く予算委員会で追及を続ける構えを見せる。

自民党内からも「問題はだんだん大きくなってきた。なぜ用地がそんなに安くなるのか怪しく感じる」(中堅議員)と不安の声が漏れ始めるなか、首相はヤジで騒然とする委員会室でいらだちを爆発させた。「私だって職を賭して答弁しているんですよ。まじめに聞いて下さい」(南彰、岩尾真宏)

■売却経緯、異例ずくめ

森友学園が大阪府豊中市の国有地(8770平方メートル)を買うまでの経緯は、異例ずくめだった。

一帯は住宅地や田畑だった。1974年に大阪(伊丹)空港の騒音対策区域に指定され、国による補償・移転が進んだ。区画整理で2005年に1筆に集約。騒音対策区域からも外れ、国土交通省大阪航空局が財務省近畿財務局に売却を頼んだ。しかし国の09~12年の調査で3メートルまでの地下に廃材などが見つかり、一部区域から環境基準を超える鉛とヒ素も検出された。

別の学校法人が11~12年、学校用地として7億円前後で売買交渉。最終的には汚染土とごみ撤去の自己負担を見込んだ上で約5億8千万円を提示したが、財務局は応じなかった。

森友学園が小学校用地として手を挙げたのは13年9月。校舎建設費などがかさむことを理由に、まず10年以内の売買を約した定期借地契約を15年5月に結んだ。学園は同年7~12月に地下の大きな廃材や汚染土を除去し、国が1億3176万円を負担した。

ところが学園は16年3月、基礎工事中に地下深くから新たなごみが見つかったと報告し、約2週間後に「国が撤去していたら開校が遅れる」と購入を希望。同年6月、財務局は鑑定価格9億5600万円からごみ撤去費8億1900万円などを引いた1億3400万円で、公共随意契約で売却。10年分割払いとした。

24日の衆院予算委員会などで、財務省の佐川宣寿・理財局長は、定期借地から売買に変えて分割払いまで認めた契約を「適正な処分」と強調しつつ、過去に例がないと認めた。民進の今井雅人議員は「ウルトラCの技を合法の中で組み合わせて、芸術品とも言えるスキーム」と指摘した。

そもそも問題発覚の発端は、財務局が原則公表の売却価格を「学園側の強い要請」で非公表にしたことだった。今年2月8日時点で過去3年間に公共随意契約で売った36件のうち非公表はこの1件。朝日新聞の報道後、一転して公表した。

民進など野党は国会で、財務局が「開校に間に合わせたい先方の意向」を理由に、ごみ撤去費の見積もりを本来の一般競争入札にかけず、掘削調査せずに大阪航空局と調整して算定した妥当性も追及。学園側が一部しか撤去していない疑念も強まったが、佐川理財局長は国の免責条項を根拠に「撤去するかは先方の判断」と述べた。

売買と学校認可の二つの審議会も異例の「協議」をした。大阪府の基準では小学校用地は自己所有が原則だが、国有地の借地は例外で認めている。府私学審議会は定期借地契約前の15年1月27日、財務状況の確認など条件付きで「認可適当」と答申。2週間後、財務局が事務局を務める国有財産近畿地方審議会は定期借地契約を「了承」した。

府私学審議会の梶田叡一会長は「認可適当を出さないと国有財産の審議会が動かないこともあり、事務局同士が協議した」と述べた。22日の臨時審議会では学園の財務状況を危ぶみ、認可に慎重判断を求める意見も出た。(吉村治彦、飯島健太)

(記事の貼り付け終わり)

この森友学園は、日本会議の関係者やそれに思想的に共鳴する政治家を呼んで、「教育講演会」を開いています。今回の国有地の格安払い下げをめぐる疑惑は、安倍政権を支える日本会議という集団が、信奉するまがい物の右翼思想を更に広めるために、教育勅語を園児に強制的に暗唱させる幼稚園や、その幼稚園児を継続的に教育する小学校の建設が行われていることを明らかにしただけではなく、安倍政権という国家権力が民間に国有地の払い下げによって便宜を図っていたという権力の腐敗をも露呈しました。

今回の対談は、その疑惑の発覚直前に行われたということで、その話は含まれていませんが、左右の政治運動に詳しい、副島隆彦先生との対談ということもあり、非常に興味深いものになっています。

170127菅野完副島隆彦(full) from SNSI on Vimeo.

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中田 皆様こんにちは。私、中田安彦でございます。今日は2017年1月27日金曜日です。本日はベストセラーになりました『日本会議の研究』、扶桑社から出ている本ですけど、こちらをお書きになられた菅野完さんをお呼びして、副島先生とざっくばらんに語り合っていただくという企画でございます。


菅野完氏

菅野完(すがの)さんを簡単に紹介させていただきますと、奈良県生まれでいらっしゃいまして、サラリーマンで勤務した傍ら執筆活動を開始された方で、お仕事をやめられてから、15年から政治分野の記事や雑誌を、オンラインの「ハーバー・ビジネス・オンライン」というところで連載を始められました。当時から『日本会議の研究』は「草の根保守の蠢動(しゅんどう)」というタイトルで人気を博していたものです。去年、この連載がめでたく、これが1冊の本になりました。そしてマスコミでも大きく取り上げられまして、「日本会議」という言葉がある種、去年の日本の政界のキーワードになったわけです。それで現在に至るわけですが、菅野さん、この本が出てから日本会議のほうから直接に攻撃もありましたよね。


日本会議の研究 (扶桑社新書)

●「日本会議の研究」は本職の右翼から褒められた

菅野 そうですね。扶桑社に対して日本会議の事務総長の椛島有三(かばしまゆうぞう)から出版差し止めをお願いしますというファクスが送られてきました。その後、僕がここで名前を挙げている人たちから一通り扶桑社に対して抗議の手紙、ファクスが届いているという状態ですね。第6章に登場する安東巌(あんどういわお)という人物に裁判を起こされているというのが今のステータスです。

中田 安東さんはこの本である種、黒幕的な扱いというか。

菅野 まあ黒幕というか、精神的支柱という。

中田 精神的支柱ですね。逆に日本会議の関係者だった方とか、保守と言われる人たちからよくぞ書いてくれたという声は。

菅野 拍手喝采と言ってもいいんじゃないんですかね。

中田 なるほど。

菅野 とりわけ本職の右翼の人たちはものすごく喜んでくださっている人々が多いですね。

中田 どういうふうに喜んでいらっしゃるんでしょう。

菅野 本職の右翼とはちょっと違うんですが、わかりやすい事例は、これは後ほど先生とのお話の中でも申し上げようかと思っているんですが、北朝鮮による拉致問題をずっと追いかけていらっしゃる方々もそうです。拉致問題というイシューの性格上、あそこは運動体の中に女性の比率が結構高いんですね。子供がかわいそうとかいうところがあるので。そこの集まりに呼ばれていったときときに、何で拉致被害者の救援活動をやっていらっしゃるような方々に僕は呼ばれるんだろうと思ったんですけど、よくよく話を聞いてみると「私たちは同じように日の丸を持って、君が代を歌って運動しているけど、日本会議は大嫌いだ」と言うのです。あそこほど男尊女卑(だんそんじょひ)が激しいところはないんだと。「あそこは天皇陛下だとか憲法改正だと言っているけども、本質は反共でも何でもなく、単なる男尊女卑のミソジニー(女性差別主義者)の集団じゃないかと思っていて、本当に嫌いだった。菅野さんがそれを言語化してくださったのでとてもありがたい」というような話をされまして、なるほどと思ったりしたこともあります。

中田 私、菅野さんのお名前とツイッターでの活動とハンドルネームが最初、一致していなくて、@noiehoie というハンドルでやられていて、2011年の原発事故から政治的なある種の発言を繰り返されてきていて、ツイッターではよく炎上をしていたという認識があって。それでこちらの本を出されて、「あっこれがnoiehoieさんの出された本なんだ」と。すごくある種の違和感というか違うなというか、別の人が出したんだろうと思っていたんですけれども、その前に菅野名義で出された本ではなくてnoiehoie名義で出された本(『保守の本分』)も読みました

菅野 ありがとうございます。

中田 街頭運動みたいなことにも参加されていた。しばき隊というものにも所属していた時期があるというふうなことを書かれていましたけれども、今回の本を書くことがその前の活動とどういった関係があるのかなという、すごい触発された部分があるのかなと。

● 「運動に参加することと本を書くことは別」

菅野 運動によってモチベーションに火がついたとかは一切ないですね。運動のモチベーションと本を書くモチベーションは全く別なので。ただ、運動によって知り得た、あるいは運動するに当たって必然的にする必要のあった観察の結果、入手した情報というのはこの本に大分反映されているというか。とりわけ、副島先生だとわかっていただくと思いますけど、本を書くときって何を書くよりか、書かないことを選ぶことのほうが大変じゃないですか。あれもこれもいっぱい書きたいというので、書かなくていいことを……

副島 落としていくんですよね。

菅野 どんどん落としていくんですけど、その本を書くに当たって、今回の本の場合落としましたが、日本会議と在特会(ざいとくかい)の接点の部分、僕の調査は実を言うとこんなしようもない連中がこんなに活動をやれるというか、維持できるのはなぜなんだろうと。何でいろんなやつが、あんなやつらに共感するんだろうというのは、3年、4年前の僕の調査のスタートポイントだったので、そこはもう完全に運動と。

副島 なるほど。4年前がこの本を書く……

菅野 調査のスタートポイントでした。

副島 始まったと。ということは2012年。

菅野 2012年ぐらい。

中田 そうすると、今はもうある種の運動という前線からは引かれてるわけですよね。

菅野 はい。

中田 そういったある種、左の運動と右の運動両方研究されたのかなというふうな。

菅野 左側の運動って今やあまりおもしろくないので。その内実を追いかけても社会的意義もないですし、文学的なおもしろみもないわけで、はなからあまり興味はなかった。

● 右派の学生政治運動を研究

中田 そこで今日の副島先生との対談のテーマが「政治運動とは何か」「政治学生運動とは何か」ということで、こちらの『日本会議の研究』でも大きな一つのテーマとして、今、安倍政権である種、右、右翼と言われている政治家の方々がもともと長崎大学の反共学生運動のOBであるんですね。日本会議というのは、その流れに乗っている活動であるということで、いろいろな自民党の議員の名前の方が若手も含めて出てきます。

副島先生はある種、左翼政治運動に非常にお詳しくて、同時に右翼の、当時の国際勝共連合(こくさいしょうきょうれんごう)とかそういったものの活動も見てきていらっしゃると思うので、世代は違いますけれども、政治運動という形でお2人にぜひお話しいただきたいということで、今日の企画になりました。

これぐらいで私のほうの前振りは終わらせていただきまして、副島先生と菅野先生の対談に移りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

菅野 よろしくお願いします。

副島 副島です。今日は菅野完(すがのたもつ)さんに来ていただきました。私も初めてお会いしました。私は初めてお会いしました。

これ私が12月31日の夜に、彼にお電話したんです。初めてお電話した。なぜならこの『日本会議の研究』の巻末の経歴のところに西麻布の自分のご住所と電話番号まで書いてある。こういう人はもうこの30~40年、いないんです。1960年ぐらいまでいたかもしれない。だけどいろんな問題があって、普通の人ですら住所は書かない。電話番号、教えない。もっと言うと自分の家のアパートの名前すら消すという時代ですから、こんな時代に自分の顔も当然そうだけど、住所と電話番号までさらして生きているというのは大変なことです。あなたは偉いと言って、まず私は褒めたというか、私でもそういうことはしません。

● 言論人の良いところは「組織に所属しないこと」

嫌がらせや妨害はあると世の中の人もみんな考える。人間関係というのはどんどん複雑になっている。だから菅野さんがこういうことを自分でなさっているから、お電話に出られたんで40分ぐらいお話しした。それで菅野さん、偉い人だなと思って。私の言葉で言うと真っ裸主義と言いまして、私も真っ裸主義でやってきた。私生活の秘密というのはあるけどそんなもの別にどうだっていいんだと。

言論人、評論家ですから、ほかの権力者とか有名人たちの私生活はどうでもいいんだけどね。政治思想の流れで人物像を描いてきた人間ですから、自分のことを書かれるという段になったとき逃げるわけにはいかない。ご自由にどうぞというほどでもないけども、やっぱり物書き、言論人、ジャーナリストは自分をさらして、評価判断を周りがするんだということを前提にして、堂々とした態度を常にとっていなければいけない。

だから物書き、言論人の唯一の取り柄は、組織団体に所属しないということなんですよ。所属してもいいんだけども、お金がかかっている、生活がかかっているような企業とか、ちょっとしたお金をもらっているような組織、団体にかかわっていますと、発言はとにかく控えなければいけなくなります。自由に物が言えない人間は、言論人としてはだめなんですね。自分の意思に基づいて、自分の知能と存在を全身でかけて文章を書いて発言をするというのは非常に大事なことだと私は思っていて、菅野さんがあらわれてくれてよかったなと思いました。

この本の内容、私は12月になって初めて読んだ。この本は去年の5月に出ているんですが、12月になって読んでその年末の日にお電話した。この内容に関して、今から私は菅野さんにこのページの何という人物と何という運動についての確認みたいなことをしながらお話をしていきたいと思います。

菅野 はい。ありがとうございます。

副島 あと、最初に言っておきますけど、1月にYouTubeに菅野さんが内幸町ですか、外国人記者クラブ、フォーリン・プレスのクラブに呼ばれていって、英語でお話ししている部分もあった。テキサス大学のご出身だとか。

菅野 そうです。

副島 非常に大事なことなんですけど、ほとんどは欧米の白人、アジア諸国でもいんですけど、記者たち相手に英語できちんと堂々と「日本会議の研究」という、この組織は一体どういう組織であるかということをお話しした。

ただ、すごいなと思ったのは1点、日本会議というのは女子供を相手にしない人たちだというか、先ほどのアルル君の言い方で言えば、差別している人たちなんだという、その1点を英語で簡潔に外国人記者たちに語っていたという点です。

この1点を突くというのは非常に大事なことで、東京に来ている外国人記者クラブだって、それはもう『ニューヨークタイムズ』みたいな大きなところの、後ろに恐ろしい組織を背負っているような大新聞から、ヨーロッパのテレビから、あとはインディペンデントなジャーナリストみたいな人たちまでいます。

彼らに説得的に、パースウェイシブ persuasiveというんだけど、がっと押していくためにはメンタリティーよりマインドなのよ。マインドは心じゃないですよ。日本人は心臓と言うからおかしくなるけど、脳なんですね。ブレインの中の「シンキング・アビリティー」のことをマインドというんですよ。こういう基本のところができていない民族で本当に嫌になる。そこのマインドのところで、知能、思考のところで外国人記者たちをうわっとつかんでしまうんですね。ああ、これは女性差別をしている団体ですということで、それは世界基準に合わない。

世界基準という言葉を私はもうこの30年、ワールド・バリューズと呼んできて、スタンダードはだめなんですよ。ワールドスタンダード、グローバルスタンダード。あれは工業品規格という意味なんです。JIS規格みたいなね。やがて中国は日本のJIS規格を改良して世界基準の工業規格を世界に向かって公表するんじゃないかと私は思っています。そのぐらい日本のJIS規格も、ジャパン・インダストリアル・スタンダードですよ。スタンダードが基準なんですね。工業品規格。そうじゃない、文化的なもの、社会的なもの、政治的なもの、全部含んだ価値の全体のあり方はワールド・バリューズというんだと。

そのワールド・バリューズがわかっている人なんだと菅野さんは。非常に珍しい日本人で、42歳ですから私のここにいる弟子たちとほとんど同じ年で、私は63だから21歳違いますからね。私が知っていることで大事なことを教えたいという気持ちがありましてね。

菅野 ありがとうございます。

副島 だからここは、もう菅野さんもこの本1冊でデビューなさっているから、評論家としていろいろなところに呼ばれてこれからも言論戦もやるし、いろいろな言論で闘っていかれると思うけども、私としてはまず基本事項の知識のところで21年早く生まれた人間として、この言葉のここは実はこういうことだったんですというのをお教えしたいというのが、私が菅野さんとお話ししたかったことで、それは学生運動って何だったんだということの説明をしたいと思ったからなんです。

● 「日本会議」は女性差別主義者の集団

ですから、何で女性差別なんていう、そんなことは誰も知っていることだけどだめなのかは、今の天皇譲位(じょうい)問題で明仁(あきひと)天皇、今上天皇(天皇陛下)と美智子皇后が怒っているわけですよ。自分は皇室典範をさっさと変えてほしいと、はっきりもう代理人を通して言っている。なぜなら憲法違反だから。両性の平等って憲法に書いてあります。男女平等を無視した法律は日本国内にあってはいけないんですよ。このことをわからないんですよ、日本人は。

特に天皇は男じゃなきゃいかんとか言う連中はね。例えば企業が男子総合職30人、女子補助職募集とかやったら、これは労働基準監督署や総務省や人権を管理している法務省が飛んできますよ。叱られるだけじゃ済まないですよ。

ところが皇室典範という、日本国内上は法律で男系の男子は皇統を引き継ぐ、次の天皇になると。そういうことを言ってはいけないんですよ。これがわかっていないんだ。つまりワールド・バリューズに反しているという自覚がない。何が悪いとこいつら言いますからね。本当にいけない人たちで、それを外国人記者クラブの人たちは当たり前のこととして理解しているんですね。

菅野さんもそれがわかっている人なんですよ。ところが私の弟子たちでもそれがわからないのがいっぱいいて、日本というのは国内と世界との関係における教育ができていないんですよ。恐ろしい国なんです。これは戦後70年のアメリカによる愚民化政策だと思う。くるくるパアに日本人をするための教育が一貫してなされてきた。一番悪いのはここです。しかし、それに便乗するような形で日本的右翼というか、自分たちでは愛国派だと思っているおかしな連中がここまではびこっている。その象徴が日本会議ですから、この部分で話が一致していきましてね。

だから私は外国人記者クラブで菅野さんが自分で講演なさっているところで、最終的に天皇の譲位問題で次の徳仁皇太子が徳仁(なるひと)天皇になる。そのお嬢様である愛子(あいこ)様が精神的に不安定であるから排除するとか、そういう理屈を言う。お母様の雅子様もおかしいとかね。何を言うかと。

長女であれ長男であれ、天皇の次の長子(ちょうし)が引き継ぐのが正しいんだと。これがリベラル派左翼は戦前からの天皇制による政治弾圧があったので、嫌いなんですよね。天皇問題を語りたくないんですよ。しかし、ここは一応憲法1条から8条まであるので、9条が戦争放棄、平和憲法ですね。天皇制というのは国王ですから。エンペラーとか皇帝ではありません。世界中にある国、王国の一種なんですね。それを認めた上で憲法を守ろうという勢力があるわけで、私はもうそこに所属します。

菅野さんも大体そうだと思いますが、どうですかね。そこはまた……

菅野 最近、ちゃんとした左翼の方で確かにそんなことを言う人は少ないですけど、嫌だなと思うのは、安倍政権憎しで天皇陛下のお気持ちを踏みにじるつもりかなんていう言葉を、リベラルと自称する人が簡単に口に出すところがあるんですね。僕はあれが安倍政権よりもいらいらして。

副島 不愉快で。

菅野 不愉快ですね。リベラル、自由主義者だと言っているのであれば、立憲主義に基づいて粛々と処理しろということ以外は言えるはずがないのに、安倍は天皇陛下のお気持ちを……

副島 不敬であるとか。大御心(おおみこころ)に反する、とかいう。

菅野 反しているとか。それは僕ら右翼が言うなら別にいいですけども、リベラルの人たちが言う言葉じゃねえだろうと、最近ずっといらいらしていますね。

副島 とにかく護憲勢力と憲法改正勢力で、安倍はもう確実に憲法改正に向かって自分の全存在意義をかけていますからね。その一歩手前のところで天皇譲位問題で次の次は悠仁(ひさひと)皇子ですけど、御子を秋篠宮(あきしののみや)の息子をつけたいという勢力を代表している。日本会議なんてそのための団体のような人たちでね。憲法改正派なんですね。そこは日本国内の大きな対立線ですからね。私はそういう枠組みというのは、自明のこととして、一応言葉の使い方から始まり、ここで菅野さんとお話ししたいと思いました。ちょっと私の話が長かったんですけれども。

菅野 いえいえ。

副島 何かご自分のご主張とかあったらどうぞ。

菅野 これは後で出てくるんですけど、今日の対談ってどういう方がごらんになるかわかりませんが、僕側から見ている人に持って帰ってもらいたいのは、こんな本を書いておきながらなんなんですけど、日本会議って別に大したことないよということ。「巨大組織・日本会議」みたいなイメージがもし見ている人の頭の中にあるのであれば、いや、そうじゃないんですよということと、まずそれを前提にして「でも影響力、持ってるよね」ということなんです。

その影響力ってなぜに、どのように行使されるのかということですね。時間は限られていますけど、その中でこの対談を読み終わったら、「ああ、そういうことか」とわかってもらえればいいと思います。

副島 弁明するわけではないけど、私はこの本の中に出てくる人の7割ぐらい知ってるんですよね。呼ばれて行って話をしたとか。その説明をしたかった。村上正邦(むらかみまさくに)さんのところにも呼ばれて行って、(永田町の)パレ・ロワイヤルで話をして、その時に最後に「二度と来ません」と言ってやった。失礼だと。村上正邦さん自身は参議院のドンと呼ばれた人ですからね。この人は野中広務さんやら横にいる親分だった竹下登の子分の

菅野 青木さん。

副島 村上さんは、青木幹雄(あおきみきお)さんたちに追い出されたんですよ。そういうことはもうはっきりしている。自分がドンですから、好々爺(こうこうや)で立派な人格の、すぐれた穏やかな人の態度を一貫してとっているんですけどね。

私は嫌なんですよ、あの態度は。呼ばれていって、話をしたんだけども二度と来ませんと。あなたたちはアメリカに対する態度を間違っている。私は日本は本当の独立国でありたいけれども、アメリカは日本国民の資産も奪い取るけれども、独立国としての行動を許していないと。日本共産党もそうです。創価学会もそうですけど、「米軍帰れ」って言えばいいのにどうして言わないんですかと。自分の国は自分で守ると一言も言えないで、右翼だとか愛国家だと言うこと自体がおかしいと。この議論は、本当は日本共産党系の憲法学者たちから、戦後最初に出たんですけどね。

● 「世界普遍価値」に挑戦する日本会議

日本国憲法よりもその上に安保条約があるじゃないかと。それは安保条約のほうが上なんですよ。日米安保条約。そうすると、前提の大きな真実を隠しておいてから憲法を守れとか、憲法を変えようということ自体がおかしいと。ただし、これを言い出したのはリベラル派もいるけども、共産党系の憲法学者たち、これは昔は優秀でした。その人たちが言ったことなんですね。

だから理論の組み立て方っていろいろなふうにできるので、だから私がさっき(譲位問題について)言ったのは日本国憲法を解釈して、内閣の助言と承認、憲法4条に反して今の天皇が勝手な発言をしたと。内閣である安倍政権を無視して勝手な発言をしたと。ゆえに憲法の外側に出た、許さん、処罰するという考え方なんですよ。そうじゃないんだと。あなたたちの憲法解釈なんていうものではなくて、日本国内の憲法解釈より上に世界というものがあるんだよと。ワールド・バリューズがあって世界で通用している大きな流れがあって、それに逆らうのはやめなさいと。

公然と男女差別をして当たり前とかね。もう前振りで言っちゃいますけど、1978年に昭和天皇が戦犯合祀、靖国神社に東条英機以下17~18人、名前の札を持っていっただけなんだけど、それは厚生省の戦後を処理している局が持っていった形になっているけど、合祀(ごうし)してまとめてまつってしまったら、昭和天皇はもう行かない、参拝しないと宣言したんですよ。怒っているんですね。ストライキをやったんです。

これは私は10年前に自分の論文で書きました。ザ・カルト・オブ・ヤスクニと。安倍晋三たちはあのとき政権をつくっていましたから、世界から呼ばれているんだと。あなたたちはカルト集団なんだと。欧米のジャーナリストはそう思っていますよと書いた。日本国内ではほとんど理解されず、2007年、2008年からもう10年たちました。ですからそういうことで、こういうことを言っても安倍晋三及びその周辺は歯牙(しが)にもかけない。副島なんて影響力がないから放っておけばいいぐらいに思っていますけどね。そうじゃないんだと。「あなたたちがやっていることは、昭和天皇の意思にすら逆らっているんですよと。とんでもないことなんだ」と言わなきゃいけない。

(保守の奴らは、)「昭和天皇は好きだけれども、今の明仁天皇は嫌いだ」と公然と言いますからね。昭和天皇の意思が子供さんである明仁天皇につながり、さらに子供さんである徳仁、次の天皇につながっているんですと言うふうには考えない。だから世界の言うことを聞け、戦争を仕掛けるな。危ないことをするなという昭和天皇の意思に逆らう気かという議論になるんですね。

これは菅野さんが言った、いわゆるリベラル派のどの程度の知識人か知らないけど、彼らも無自覚なんですね。今はもう戦い、争いがなくなったものですから、素朴な自分の感情がほとばしり出ちゃったりするんですよ。でもほとんどの旧労働組合運動とか、左翼系とか、市民運動の人たちは、天皇問題には触れたがりません。発言しません。考えません。それが現状だと思いますけど、どうでしょうね。この早瀬善彦さん(注:『日本会議の研究』に登場する、元日本会議のメンバー)という人も何か訴えているんですか。

菅野 えーと、彼は……

副島 同志社大学の嘱託講師。

菅野 そうですね。今、もうそれをやめちゃったのかな。京都で塾を経営して結構成功してるみたいですけど。彼は最も早く学生の立場で日本会議の活動にオルグされちゃって、こいつらおかしいんじゃないの、気持ち悪いんじゃないのという声を上げた人ですね。

副島 あっ、そうですか。

菅野 はい。

(つづく)

「1656」全4回で『日本会議の研究』の著者、菅野完(すがのたもつ)氏と副島隆彦の対談を載せます。「政治運動とは何か」(1) 2017年2月27日

 

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