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❻『生体は人体は、『機械論(きかいろん)』だけでは語れない!』❻「福岡伸一動的平衡3 チャンスは 準備された心にのみ降り立つ」を読む「第6章 遺伝子をつかまえて」


 

 

第6章

遺伝子をつかまえて

オートファージ

は、動的平衡を支えるしくみ

二〇一六年のノーベル医学・生理学賞は、

日本人研究者・大隈良典氏の

オートファジー研究に対する貢献に対して授与された。

ここ数年来、次々と日本人がノーベル賞に輝くことが続いた

(忘れっぽい人のために列記すると、

一二年は、iPS細胞の開発で、山中伸弥氏に医学・生理学賞、

一四年は青色ダイオードの発明により、

赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏に物理学賞、

一五年は寄生虫病薬の開発で、大村智氏に医学・生理学賞、

ニュートリノ研究で、梶田賢章氏に物理学賞)

ので、今回も大きなニュースになった。

日本人がノーベル賞をとると、

テレビは特別番組、

新聞社は号外が出て、お祭り騒ぎになる

(片や、専門家しか知らない外国人が受賞すると、

その研究がどれほど価値があるものであっても、

一気に熱が冷め、記事もごく小さいものにしかならない。

一六年の物理学賞、化学賞がそうだった)。

「日本人受賞を逃す」というヘッドラインを流した局もあったほどだ。

これではまるでオリンピックのメダル競争と同じである

(私自身も新聞社の依頼で緊急座談会などに参加して、

お祭り騒ぎの片棒を担いだので、これは自戒を込めて言っている)。

そしてお祭り騒ぎの内容はといえば、

研究自体はごく大雑把にしか説明されず、

むしろ受賞者の人となりや家族の支え、

昔の同級生の証言といった人情話ばかりになる。

結局、

大隅先生は実はお酒が大好き、みたいな印象しか残らない。

そこで、

ここではオートファージ研究の意義についてあらためて考えたい。

生命科学研究の本質は、「薬の開発や病気の治療に役立つ」

といった実用的な成果ではなく、

「生命とは何か」という根源的な問いに対する

答えの一端が明らかにされるということである。

一言でいえば

「生命は、(自分自身を)

つくることよりも、

壊すことを一生懸命に行っている」

ということになる。

そのために少し過去を振り返っておこう。

二〇〇四年のノーベル化学賞は、

A・チカノーバ―、A・ハーシュコ、I・ローズの三人の研究者に与えられた。

ユビキチンシステムと呼ばれる細胞内タンパク質分解の仕組みを解明したことが評価された。

ノーベル賞講演の冒頭、

チカノーバ―は、

おもむろにルドルフ・シェーンハイマ―について話しはじめた。

私は密かに快哉を叫んだ。

私にとって、シェーンハイマ―はヒーローだが、

若くして謎の自殺を遂げ、科学史的には半ば忘れ去られた存在だったからである。

シェーン・ハイマ―は、ナチス・ドイツから亡命、

一九三〇年代から一九四〇年代にかけて

米国ニューヨークのコロンビア大学で研究を行った。

シェーン・ハイマ―は、同位体を使って生体物質の動きを可視化し、

私たち生物が食べものを摂取することの意味を問い直した。

一般に、生物にとって食べものとは、

自動車にとってのガソリンと同じ。

つまりエネルギー源だと考えられていた

(今もそ捉えている人は多い)。

しかし実はそうではない。

確かに食物(主に炭水化物)はエネルギー源として燃やされる部分もあるが、

タンパク質は違う。

私たちが毎日、

タンパク質を食物として摂取しなければならないのは、

自分自身の身体を日々、作りなおすためである。

シェーンハイマ―はこの事実を鮮やかな実験で示した。

たとえば私たちの消化管の細胞はたった二、三日で作り替えられている。

一年も経つと、昨年、私を形作っていた物質はほとんどが入れ替えられ、

現在の私は物質的には別人となっているのだ。

つまり、生命は絶え間のない分子と原子の流れの中に、危ういバランスとしてある。

私が自らの生命論のキーワードとしている

「動的平衡」(どうてきへいこう)

である。

それまで静的なものとして捉えられてきた生命観に、

シェーンハイマ―は、新しいパラダイム・シフトをもたらしたのだ。

動的平衡の流れを作り出すためには、作る以上に壊すことが必要である。

それゆえ細胞は一心不乱に物質を分解している。

チカノーバ―たちは、シェーンハイマ―の遺志を継いで、

壊すことの重要性を明らかにしたのだった。

生命にとって重要なのは、作ることよりも、壊すことである。

細胞はどんな環境でも、いかなる状況でも、壊すことをやめない。

むしろ進んで、エネルギーを使って、積極的に、

先回りして、細胞内の構造物をどんどん壊している。

なぜか。生命の動的平衡を維持するためである。

秩序あるものは必ず、秩序が乱れる方向に動く。

宇宙の大原則、

エントロピー増大の法則である。

この世界において、

もっとも秩序あるものは生命体だ。

生命体にもエントロピー増大の法則が容赦なく襲いかかり、

常に、酸化、変性、老廃物が発生する。

これを絶え間なく排除しなければ、

新しい秩序を作り出すことができない

。そのために絶えず、自らを分解しつつ、

同時に再構築するという

危ういバランスと流れが必要なのだ。

これが生きていること、

つまり動的平衡である。

このパラダイム・シフトに新しい潮流が加わった

。細胞はさらに巧妙で大規模な分解システムが備わっていた。

それが大隅良典氏のオートファージ研究である。

オートファージとは自食作用のこと。

細胞内にはミトコンドリアや輸送小胞などの構造体がある。

細胞は特殊な膜によってこれらの構造物を取り囲み、隔離してしまう。

隔離したあと、この区画に酵素を送り込んで

(この酵素が貯蔵されている小器官をリソソームという)、

あっという間に構造体を分解してしまうのである。

分解産物はリサイクルされたり、排せつされたりする。

つまりエントロピーが捨てられている。

大隅チームは酵母という微生物をモデルに使って、

オートファージのメカニズムを詳細に明らかにしたのだ。

ユビキチンに続いて

オートファージ研究がノーベル賞に輝いたのは、

シェーンハイマ―から連綿と続く

生命科学の系譜から見ると、当然の帰結といえる。

mRNAからcDNAをつくる

DNAはデオキシリボ核酸、

RNAはリボ核酸で、

どちらも非常に似通った化学構造なのだが、

ほんのひとつ、

デオキシ構造(水酸基(-OH)がない)の差異だけで、

物質としての安定性が格段に違ってくる。

DNAは化学的に安定的で、

RNAは化学的に不安定な(分解を受けやすい)物質なのだ。

実はこれにはわけがある。

DNAは情報担体として安定的である必要があるが、

RNAは情報の運び屋なので、

細胞にとってむしろ不安定なほうが都合がよいのである。

不安定なものは壊しやすい。

細胞は環境の変化にすばやく適応するため、

個々のタンパク質は必要なときには増産し、

不要なときは減産する、という臨機応変態勢にある。

それはタンパク質自体の合成速度、分解速度によって調整することが可能だが、

その前段階のmRNAレベルでも調整することができる。

むしろ分解しやすいmRNAの量を調節するほうが

すばやく変化に対応できる場合がある。

こんな理由から、mRNAは壊れやすいリボ核酸で構成されているのだ。

デオキシのオキシとは、水酸基(-OH)のことで、

デとはそれが外れていることを表す

。つまりデオキシリボ核酸(DNA)とは、

リボ核酸に存在する水酸基がない核酸という意味だ。

水酸基があるとその酸素原子が周囲の電子を引きつける。

電子の不均衡は物質の不安定さを増大させる。

つまり水酸基があるとその物質は分解や化学反応を受けやすくなる。

RNAが不安定で、DNAが安定とはそういうことなのだ。

しかし、実験技術上、

タンパク質のアミノ酸をmRNAから得ようとすると、

壊れやすさというのは致命的な問題となる。

せっかく釣り針によって釣り上げられたとしても、

その魚(RNA)がすぐに死んで崩れ去ってしまうのであれば、

獲物を分析しようにもお手上げである。

そしてもう一つ厄介なのは、mRNAが二重らせん構造ではなく、

一本鎖であることだ。

DNAのように二本鎖になっていれば、

互いに他の鏡像となっているがゆえに、

そこから情報を複製することは比較的容易だが、

不安定な一本鎖mRNAはたとえ捕まえたとしても、

人工的に情報を増幅させることが極めて難しい。

そこで生み出された方法が、

mRNAからcDNAをつくる、という画期的な技術だった。

細胞内の情報は、DNA→mRNA→タンパク質と、一方向に流れる。

これはセントラルドグマと呼ばれる

生命現象の大原則で、

ながらくその逆方向の情報伝達はありえないと考えられてきた。

ところが

レトロウイルスという特別なウイルスは、

この大原則を破ってRNAからDNAを作り出す方法を身につけていた。

レトロウイルスは逆転写酵素という特殊な酵素を作り出し、

RNA情報尾鋳型にして相補的なDNAを合成していたのだ。

逆転写酵素の発見は。セントラルドグマのパラダイムを書き換える画期的な発見だった。

この逆転写酵素を利用してmRNAからその鏡像となるDNAを合成することができる。

この結果できるのはRNAとDNAによるハイブリッド二重らせんである。

ついでRNAを分解する。

RNAは上記のとおり不安定なので、

熱やアルカリ、あるいはRNA分解酵素によって簡単に分解できる。

一方、DNAは安定的なのでこのような操作を加えても壊れることはない。

こうしてもともとのmRNA情報を写し取った一本鎖DNAが残ることになる。

さらにこの一本鎖DNAを鋳型にして、

DNA合成酵素によって、

相補的なDNAを合成することができ、

DNAはさらに安定した二重らせん構造をとることになる。

この結果、出来上がったものは、

mRNAからセントラルドグマを逆行して作り出された、

相補的(complementary)DNAを呼ばれる。

これがcDNAなのだ。

“細胞の図書館”

cDNAライブラリー

細胞から全部のmRNAを抽出し逆転写酵素を使ってDNAを作り、

そこからcDNAを合成すると、

もともと細胞内にあったすべての種類のmRNAは、

まるごと安定したcDNAに写し取られることになる。

また、mRNAの量的な分布も、そのままcDNAに反映されることになる。

つまり、mRNAの量が多い遺伝子(さかんに発現している遺伝子)

とmRNAの量が少ない遺伝子(あまり発現していないレアな遺伝子)

は、そのままたくさんのsDNAと少量のcDNAとなる。

つまり、cDNAは、質としても、細胞内にあるmRNAの鏡像となる。

そして、不安定だったmRNAと異なり、安定した、

しかもいくらでも増幅可能なDNAとしての形状をとることになる。

このようにして作り出されたcDNAのセットを

cDNAライブラリーと呼ぶ。

まさに“細胞の図書館”だからだ。

脳細胞のmRNAから作り出されたcDNAライブラリーは、

脳細胞で働いている遺伝子まるごとのセットである。

膵臓の細胞のmRNAから作り出されたcDNAライブラリーは、

膵臓で働いている遺伝子まるごとのセットである。

脳細胞cDNAライブラリーには、

神経細胞特有の遺伝子情報が含まれている。

他方、膵臓細胞cDNAライブラリーには、

膵臓ランゲルハンス島で作られるインシュリン、

あるいは腺房細胞で合成される消化酵素トリプシンの遺伝子が含まれる。

それぞれ脳細胞と膵臓細胞固有の遺伝子であり、互いに排他的な遺伝子である。

その一方、どの細胞でも共通して働いている基本的な遺伝子というものがある。

細胞分裂の維持・実行、エネルギー生産・代謝、分泌や細胞内の物質移動、

細胞内骨格などといった基本的な遺伝子のことだ。

これらの遺伝子はハウスキーピング遺伝子と呼ばれる。

ハウスキーピング遺伝子はどの細胞でも一定量、常に働いている。

つまり、それらの遺伝子にはいつもmRNAが存在している

。これらハウスキーピング遺伝子のmRNAもまたcDNAライブラリーに写し取られる。

ハウスキーピング遺伝子は、脳細胞でも膵臓細胞でも働いているから、どちらのcDNAライブラリーにも含まれることになる。

つまり、それぞれの細胞のmRNAから作られたcDNAライブラリーは、

細胞に共通のハウスキーピング遺伝子群プラス、

それぞれの専門化された細胞に固有の、組織特異的な遺伝子群の集合体ということになる。

このように準備されたcDNAライブラリーは、

大腸菌や特殊なウイルス(ラムダ・ファージ)に組み込むことができる。

つまり大腸菌やラムダ・ファージはcDNAライブラリーの運び役となる。

コロニーを転写したフィルターを作る

ここまで、細胞で発現している遺伝子群、つまりメッセンジャーRNA(mRNA)をそのままDNAに写し取る方法、すなわちcDNAライブラリーを作る原理について細かいことをいろいろ説明してきた。ここから先は、いかにしてそのライブラリー(図書館)から、目的の書物を探し出すかについて考えてみよう。

細胞から作ったDNAライブラリーと大量の大腸菌を混ぜ合わせ、塩溶液の中で短い時間熱ショックを与える。すると個々のcDNAは、いずれかの大腸菌の中に取り込まれることになる。ちょうど図書館の蔵書を、一冊ずつランダムに生徒に配るようなイメージを創造していただきたい(生徒を大腸菌にたとえてごねんね)。cDNAの分子数(総冊数)よりも、大腸菌の菌体数(生徒数)を多くしてあるので、図書館の本はいずれも誰かの手に渡る。本がもらえない生徒(cDNAを受け取れなかった大腸菌)も存在する。でも、こうしておかないと図書館の蔵書を分散させることができない。ここが大事なポイント。cDNAを一分子ずつばらけさせることが重要で、しかも生徒ひとりひとりが二冊以上、本を持たないようにする。

円形のシャーレに寒天でできた栄養培地を作り、その表面にsDNAを受け取った大腸菌を薄く塗り広げる。cDNAを受け取った大腸菌は、菌体内でせっせとcDNAのコピーを作る。同時に、大腸菌はおよそ一時間に一回の割合で細胞分裂をして増殖する。その都度、cDNAのコピーも受け渡され、増殖される。大腸菌は自分で動くことができない。だからシャーレの上に分散された複数、たとえば一〇〇匹の大腸菌がばらまかれたとすると、その一〇〇匹はその場所で増殖していく。大腸菌一匹は体長一マイクロメートルくらいなので、もちろん肉眼では見えない(詳細は省略するが、cDNAにちょっとした仕掛けがしてあって、cDNAを受け取った大腸菌だけがシャーレの上で増殖できるようになっている)。

大腸菌はシャーレの上で、二倍、四倍、八倍。一六倍と分裂していく。すると一晩もすると膨大な菌体数になる。それは肉眼でも見える。白い粒のように見える。その粒がシャーレの上に散らばっている。これを大腸菌のコロニーと呼ぶ。コロニーはまるで夜空に散らばる星々のようだ。実際、だんだん大腸菌が増えてきてコロニーが見えだすと、それは光って見える。実験がうまくいっている証拠だ。これは実験に携わった者でないと感じることができない気持ちなのだが、こうして書いていても、わくわくしてくる。

シャーレの上に広がるコロニー一粒一粒に、別々のcDNAが含まれていてしかも増産されている。一分子のcDNAではあまりに少なすぎても、こうして大腸菌の力を借りて、ばらしてしかも増やすことができるのだ。

このシャーレの上に、そっと白いナイロンフィルターを重ねる。

それは直径一〇センチメートルほどの円形をしている。

濾紙のように見えるがナイロン製なので丈夫だ。

しばらくしてからそっとこのフィルターを剥がす。

するとフィルターの上には大腸菌のコロニーが鏡像のように写し取られることになる。

もちろんシャーレのほうにも大腸菌のコロニーはまだ残っている。

あとでここから大腸菌を採取しなければならないので、

シャーレは冷蔵庫の中に保管される。

大腸菌は冷蔵されると細胞分裂を止めるが死ぬことはない。

私たちはコロニーが転写されたフィルターのほうを使って実験を進めることになる。

この中から目的とする遺伝子のcDNAを保持したコロニー

――つまり宝物のありか――

を探し出すことになる。

大腸菌はフィルターの上に貼りついたままその場所に固定される

。大腸菌の菌体内にあったcDNAもフィルターの特別な場所)

シャーレの上のコロニーがあった場所)に固定される。

フィルターを水につけても温度を変えてももう剥がれ落ちることはない。

細胞内に存在するmRNAの量が少ない遺伝子、つまり細胞内で発現頻度が低い遺伝子(それは必ずしも重要な遺伝子でないという意味にはならない。わずかな量だけで効く遺伝子であるということ)の場合、それだけcDNAライブラリーに含まれる量も少ないということになる。つまり稀覯本というわけだ。このような遺伝子を探し出すためには、それだけたくさんのコロニーを探索しなければならない。だからcDNAライブラリーを本ごとに分割し、それぞれ大腸菌に託し、それをシャーレに撒き、フィルターを作ることになる。つまりコロニーを写し取ったフィルターは何枚、何十枚になることもあるのだ。根気のいる宝探しが始まることになる。

ナイロンフィルターを漬け込む

それは一見、千枚漬けの作業工程に似ている。

私は京都で学生生活を送ったので、

その様子を見たことがあったのだ。

京都名産の京野菜である聖護院かぶの皮をむき、

薄くそぎ切りにする。直径一〇センチメートルあまり。

それは円形のナイロンフィルターにそっくりだ。

それを樽の中に一枚一枚ていねいに並べて敷き込んでいく。

間には昆布、唐辛子、調味料などが漉き込まれていく。

私たちが行おうとしている遺伝子クローニング(ライブラリーの中から特定のcDNAを取り出すこと)もある意味でこれにそっくりだ。集中力と根気とていねいさを必須とする作業。私たちの手にあるのは、薄いかぶの切片ではなく、円形の白いナイロンフィルターだ。ここまで説明してきたように、その表面には大腸菌のコロニーに由来するcDNAが貼り付いている。もちろん目には見えない。cDNAはナイロンフィルターの表面に固定され、かつ二重らせんがほどけて一本鎖状態になっている。それがもともと大腸菌のコロニーがシャーレの上で点々と散らばっていたとおりのかたちで、そのままナイロンに写しとられている。

さて私たちも、薄いかぶを何枚も漬け込んでいくように、ナイロンフィルターを漬け込む作業に入る。私たちの場合、漬け込みに使うのは伝統にのっとった樽ではなく、厚手のプラスチックでできた袋である。いわゆるジップロックのようなものだ。この中に二〇枚ほどのナイロンフィルターをなるべくバラけさせるようにそっと並べていく。シワや折れが起きないよう、ていねいに並べていく。そして袋の中を、pHと塩濃度を整えた液で満たす。この液は、DNAがもし相補的な相手方の配列を見つけたら、再結合を起こし、二十らせん構造の再生が起こりやすい条件に設定してあるのだ。液はできるだけ少量――すべてのフィルターを浸すには十分だが、過剰にならないよう――入れることになる。

話をすこし前に戻させていただきたい。

研究対象となるタンパク質(GP2)を膵臓細胞かた精製し、純化した。それをアミノ酸配列分析にかけ、GP2固有のアミノ酸配列の一部を知った。そのアミノ酸配列に相当するDNA配列を推定し、それを化学合成した。アミノ酸ひとつに対してDNA暗号は三文字(三塩基)必要なので、一〇個のアミノ酸配列から推定されるDNA配列は三〇塩基からなることになる。特別のDNA配列を人工合成することは比較的簡単である、塩基は四種類しかないので、配列さえ判明していれば、塩基を順に結合させていけばよい。aagcaaggc・・・・・・のように。いままではこれを自動的に行う合成機があるのだ。こうしてできた三〇塩基のDNAの破片こそが、私たちにとって非常に重要な釣り針、もしくは道標になる。これをプローブと呼ぶ。探査針という意味だ。

合成してできたプローブを先ほどの“千枚漬け”の袋に入れて混ぜる。プローブは見えない。ただプローブが溶け込んだ少量の液をジップロックのような袋の中に注ぎ込むだけである。袋の中に空気の泡や異物が入っていないかよく注意しながら袋を整える。もちろん中の液がこぼれ出ないように気をつけないといけない。こうしてジップロックの中に、溶液に浸かったナイロンフィルターとプローブを閉じ込めると、袋の口を熱でシールして完全に閉じてしまう。さて、これで宝探しの準備は整った。

ラジオアイソトープのラベル

cDNAライブラリーに由来するコロニーが固定された“千枚漬け”(円形のナイロンフィルター)を入れた“ジップロック”の袋、宝物を探査するためのプローブ(短い一本鎖DNA)を混ぜ、袋の口をシールして密封した。

恒温器でぬるま湯(三七度)をつくり、そのお風呂にジップロックを浸す。恒温器にはシェイク機能がついており、ジップロックをゆっくり左右に揺らしてくれる。ジップロックの内部のミクロの世界ではこんなことが起こっている。ナイロンフィルターは、ミクロな目で見るとレースのカーテンか網戸みたいなもので、スカスカの繊維から成り立っている。その要所要所二」大腸菌由来のcDNAが貼り付いている。こちらのcDNAは繊維に半永久的に固定されてしまっているので、その場から動くことはできない。

一方、あとから投入したプローブは繊維にくっつくことなく、網目のあいだを自由に泳ぎ回ることになる(自由にといっても意志の力ではなく、物理的な意味で拡散・浮遊しているということ)。そして、もしプローブが幸運にもある場所にたどり着くと、不思議なことが起こることになる。

ある場所とは、大腸菌がたまたまGP2をcDNAを菌体内に取り込み、それを増殖させ、そのコロニーが、フィルター上に写し取られた、そんな場所のことである。GP2のcDNAはいまや一本鎖DNAとなってフィルター上に張り付いている。位置が固定されてしまっているので自分自身ではもとの二重らせんを形成することはできない。でもプローブは、GP2遺伝子の一部の情報を写し取ったものである。GP2のcDNAのどこかの部分に、プローブと相補的な遺伝子配列があるはずいであり、プローブがaagcaaggcであれば、cDNAのほうは、ttcgttccg(a―t、g―cが相補的な関係)という部分配列を持ち、両者はそこで結合を起こし、部分的な二重らせん構造を作り出すことになる。いったん二重らせん構造が形成されると、それは安定した化学結合状態となり、ちょっとやそっとで壊れることはない。

そこで私たちは、ジップロックの千枚漬けを一昼夜、場合によってはもっと長く数日間、プローブと一緒に保湿して祈ることになる。わずかなプローブでもいいので、ナイロンフィルターの星々の中から、運よく自分のパートナーとなる相補的配列を見つけ出して、そこで二重らせん結合を再生してほしいと。

その後、私たちは、ジップロックを開けて溶液を捨てる。もはや余分のプローブも必要ないので(むしろ残存しているとノイズを発生するので)、それぞれのフィルターをよく洗う。泳いでいる遊離のプローブは洗い流されてしまうが、うまく相補的配列を見つけてフィルター上で二重らせん構造を再生したプローブは強い力で結合しているので、フィルターからはずれることはない。

おもむろに、そんな風に結合したプローブがないかどうか探し出すことになる。ここまでのプロセスはすべて水溶液中のミクロな分子の化学反応として進行しているので、もちろん目では見えない。DNAもプローブも、顕微鏡を使っても見ることはできない。そこにあるのはただ千枚漬けのかぶのような白くて丸いナイロンフィルターである。

でも、ナイロンしるたーのどの場所に、プローブが結合しているか、それを可視化する方法があるのだ。

それがラジオアイソトープ技術である。ラジオアイソトープとは微弱な放射線を発しづける能力をもつ元素のこと。天然にわずかながら存在し、人工的に作り出すこともできる。これは生物化学の研究を進めるうえで欠くことのできない画期的な手法となっている。

私たちがこの実験で用いたのは、リン(P)のアイソトープだった。リンは原子番号15番、血液の中にも、細胞の中にも、食品の中にも、そしてもちろんDNAの一部としても、生命現象に広く関わっている元素である。普通のリンの質量数(元素の重さ=中性子と陽子の数)は三一なのだが、質量数三二のリンが存在するのである。これによってプローブがどこにたどり着いたのか可視化することができるのだ。

探査針はGPS

さて、いよいよ遺伝子の隠れ家を突き止めるときがきた。千枚漬けの話を思い出していただけるだろうか。直径一〇セントメートルほどの白いナイロン製の薄い円盤のことを千枚漬けにたとえた。私たちはこの円盤のことを通常、フィルター、もしくはメンブレンと呼んでいる。

これまでのプロセスをもう一度整理しておくと、次のようになる。

1.特定の細胞(私たちの実験の場合は、膵臓で機能しているGP2の遺伝子を調べたかったので、膵臓の外分泌細胞)からm(メッセンジャー)RNAを取り出し、逆転写酵素とDNA合成酵素を使って、c(コンプルメンタリー=相補的)DNAを合成する。cDNAは、その細胞で発現しているすべての遺伝子(mRNA)の鏡像となる。これをcDNAライブラリーと呼ぶ。mRNAと異なり、cDNAは安定で、二重らせん構造をとっているので、複製・増幅もできる。

2.膵臓のcDNAライブラリーをベクター(cDNAを細胞の中に運搬してくれる核外遺伝子)に組み込む。それを大過剰の大腸菌と混ぜ合わせ、大腸菌体内に取り込ませる。ベクターは一分子一分子ごとに分散し、それぞれ大腸菌の内部に入る。ベクターをき取り込んだ大腸菌だけが生き延びるようにした寒天培地の上に、大腸菌液を塗布し、広げる。大腸菌は、寒天培地の上では自走できないので、その場にとどまり増殖を開始する。

3.丸いシャーレの中につくってある寒天培地の大腸菌は、体長一マイクロメートルしかないので肉眼では見えない。しかし、大腸菌が細胞分裂し、菌体数が増えてくると、小さな光る点々tなって見えるようになる。これをコロニーと呼ぶ。温度、栄養、酸素の条件がよいと、大腸菌はおよそ一時間に一回、細胞分裂する。それゆえ、寒天培地に大腸菌を塗布し、恒温器の中に一晩入れておいて、次の日の朝、シャーレを光にかざすと、コロニーがまるでプラネタリウムの小さな星々のように無数に見える。やった!ライブラリーはちゃんと大腸菌によって運ばれている。

4.丸いシャーレと同じ直径のナイロンフィルターを用意し、そっとシャーレの寒天培地の表面に重ねる。大腸菌のコロニーはナイロンフィルターに写し取られる。ナイロンフィルターを注意深くシャーレから剥がす。コロニーの一部はナイロンフィルター面に張り付き、残りはシャーレの表面にとどまる。ナイロンフィルターとシャーレは互いに互いの鏡像となる。シャーレは後日実験のため、冷温下で保管される(大腸菌は増殖を止めるが、死滅はしない)。

5.ナイロンフィルターにいったん貼り付いた大腸菌タンパク質、および大腸菌が運ぶcDNAは、ナイロンフィルター表面に固着して二度ととれなくなる。このままナイロンフィルターを高温にさらすか、アルカリ条件下に置くと、cDNAは、ナイロンフィルターに貼り付いたまま、その二重らせん構造がほどけて、二本の一本臭いDNAとなる。オープン状態になった一本鎖DNAは、その塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAと結合できる。これがプローブ(探査針=次頁参照)を使った遺伝子捜査に利用される。

6.私たちは、膵臓のタンパク質GP2の遺伝子を探し出すことを目標としてきた。そのためまず、膵臓からGP2を精製・純化して、タンパク質のアミノ酸配列を部分的に決定した。GP2遺伝子は、GP2タンパク質のアミノ酸配列の情報をコード(暗号)化している。アミノ酸配列から、遺伝子(塩基)配列が推定された。推定された塩基配列をもとに、人工的な合成DNAが作製された。アミノ酸一つにつき、塩基は三つ必要なので、アミノ酸一〇個の配列は、塩基数三〇個のDNAとなる。塩基をつなげる方法が、アミノ酸をつなげることよりも化学的には簡単にできる。これが遺伝子捜査の探査針(プローブ)となる。プローブは、GP2のcDNAと相補的な配列を有しているが、cDNAのうちいずれかの一本鎖DNAと結びつくことができる。

7.合成されたDNAの端に、ラジオアイソトープ(放射性同位元素)のリン(P)を付加する。これはラジオアイソトープを含んだATP(リン酸供与体)と特殊な酵素を使うことによって行われる。これによってプローブがたどり着く場所を特定することが可能となる。

8.密封できるプラスチックバッグにナイロンフィルターを入れ、溶液で満たす。その中にプローブを入れる。プローブは溶液中に拡散し、ナイロンフィルターのあいだをくぐり抜ける(プローブ一分子にとって、ナイロンフィルターはすかすかの網目であり、自由に行き来できる。網目の各所に、大腸菌由来のcDNAが固定されている)。

9.プローブが、自分の塩基配列と相補的なcDNA構造を見つけると、その場所に結合することになる。プローブはいわばGP2端末で、そこから発せられる電波がラジオアイソトープの放射線、そのエネルギーの発生源を追跡することによって、プローブがたどり着いたナイロンフィルターの場所を特定することができる。

GP2遺伝子を取り出す

直径一〇センチメートルほどの円形のナイロンフィルターが何枚も目の前に並んでいる。一見、ただの白い薄切りの円盤。まさに千枚漬けだ。肉眼では見えないが、ここにはミクロなレベルで、重要な現象が積み重なっている、まずナイロンフィルターの表面には点々と、cDNAライブラリーのcDNAが固定化されている。cDNAライブラリーとは、細胞で活動している遺伝子情報、つまりmRNAを、人工的な二本鎖DNAに写し取ったもの。私たちの研究の場合、膵臓細胞のcDNAライブラリーが使われている。

私たちは、膵臓で働いているタンパク質GP2の遺伝子情報を釣り上げようとしていた。そのため、まず膵臓細胞をすりつぶし、その抽出液から、GP2タンパク質を苦労して精製した。貴重なサンプルを使って、GP2の部分的アミノ酸配列を読み取った。アミノ酸配列情報をもとに、遺伝子配列を推定、その遺伝子配列を持つ短い一本鎖合成DNAを用意した。これをプローブと呼ぶ。プローブの端にラジオアイソトープのリンを取り付け、目印とした。これがGP2の役割を果たす。ナイロンフィルターを溶液に浸け、そこにプローブを混ぜた。ナイロンフィルターはミクロな眼で見ると、すかすかの網目構造。プローブはそのあいだを拡散しながら泳ぎ続け、自分と相補的な配列をもるcDNAを求めてただよう。運よく、パートナーを見つけ出したプローブは、その場で二重らせん構造を作り出す。cDNAはナイロンフィルターに固定化しているので、プローブもその場にとどまる。

私たてゃ、まさに千枚漬けを冷水にさらすように、ナイロンフィルターを洗う。余分なプローブを除去するためだ。余分な王ローブがうろついていると、そこからニセのGPS信号が出て、ノイズとなる。私たちが欲しいのは真のシグナル、つまり、目的とするcDNAにしっかりと結びついたプローブが発するラジオアイソトープも信号である。

その信号はどのように検出すればよいか。原始的ながら確実な方法がある。写真現像の原理を使うのである。ナイロンフィルターを乾かし、大きな厚紙の上に貼り付ける。それを暗室に持っていって、その上にぴたりとX線フィルムを重ね合わせる。光が入らないように特殊なサンドイッチ構造の箱に入れ、数日待つ。もし、ナイロンフィルター上のある場所からプローブの放射線シグナルが発せられていれば、それはX線フィルム上の銀粒子を焼いて黒化させる。X線フィルムを現像し、未反応の銀粒子を洗い流すと、あとには小さな黒い点が残る。その点こそが、cDNAのありかを示すのだ。私たちは目を皿のようにして、X線フィルムを光にかざし、黒い点を探す。あった!X線フィルムを、ナイロンフィルターと照合し、何番目のフィルターのどの場所から信号が出ているか、特定する。

フィルターの番号と黒点の位置が判明すると、次は冷蔵庫に保管してあったシャーレを捜し出す。ナイロンフィルターに大腸菌のコロニーが点在している。X線フィルムに黒い点をもたらした、その場所に位置するコロニー。これこそが求めるべきものだ。このコロニーの大腸菌が、GP2遺伝子のcDNAを保持しているのである。

私たちは注意深く、針の先でコロニーをつついて、大腸菌を回収する。新しい培養液の中で大腸菌はどんどん増殖する。それにともなってcDNAも複製される。あとはcDNAを精製し、遺伝子配列を解読すればよい。タンパク質と違って、cDNAのよいところは、実験でどんなに消費しても、元の大腸菌さえ保管しておけば、いくらでも増産することができる点だ。私たちは安心して実験を進めることができる。

こうして世界で初めて、私たてゃ、GP2遺伝子の全構造を明らかにすることができたのだった。

科学的発見は、一等賞にしか・・・・・・

科学的発見は、一等賞にしか表彰台が用意されていない。つまり第一発見者だけがその功績を認められ、発明であれば、一番初めにそれを成し得た人物のみが勝利者としての栄誉を得る。栄誉だけでなく、賞金や特許権などの金銭的報奨も独り占めする。二番手、さんばんてに表彰台はない。

しかしながら、科学的発見や発明は、しばしば時代的な機運や潮流の上に初めて花が開く。マネやパクリではなく、独自にそれぞれ同じことを考え、同じゴールに向かって邁進し、同じ結論に至ることがある。

このような場合、いったいどうやって真の一番手を判定できるのか。一〇〇メートル競走や競馬とちがって同じトラックで一斉にレースが行われるわけではない。科学においては、誰が一番初めに発見や発明を「公表」したか、ということによる。

何か重要な発見が公表されたとき、後から「いや、俺のほうが先に思いついていたんだ」というケースが必ず現れる。そのような事後的なクレームを排除するにはたったひと言、「では、なせ先に公表していなかったのか?」という反論で事足りる。

「公表」は、正式には学術論文がしかるべき専門誌上に掲載されることによる。学会での口頭発表、あるいは記者会見のような方法による公表が認められることもある。近年では、インターネット上に公開されることによる「公表」もありうる。

天才数学者グリゴリー・ペレルマンによるポアンカレ予想の照明の論文は、ある日突然、インターネット上に掲載された。通常の学術専門誌の場合、審査員が論文刊行の可否を検分するのだが、ペレルマンの場合、自分で勝手にアップロードしただけだったので、当初、誰もその真価を判定することができなかった。特に数学の場合、ごくわずかの専門家しか証明が正しいかどうか、わからない。一年近くにわたる専門家の検証を経て、ようやくペレルマンの証明が正しいことがわかった。ペレルマンはその後、数学界のノーベル賞であるフィールズ賞、賞金一億円のクレイ数学賞を受賞することになったが、隠遁生活のまま、いずれの授賞式にも現れず、受諾の意思も表明しなかった。

科学的発見を「公表」することは、その知見を社会全体の共有財産とする、という意義がある。これには実は長い歴史がある。一七世紀後半、オランダのアマチュア科学者アントニ・ファン・レーウェンフックは自作の顕微鏡を使って、水中の微生物や精子の存在を発見した。ところがそのすぐ後になって、「精子を発見したのは自分が先」と主張する人物が同じオランダに出現した。ニコラス・ハルトソーケルというプロの科学者だった。彼は「精子が人間の種になっていることを証明した」とまで主張し、実際、精子の頭部に小人が体育座りをしている様子をスケッチした顕微鏡観察図まで公表した。

レーウェンフックは、もともと論争や紛争に巻き込まれたり、批判を受けるのが嫌だったので、自分の研究を公表することを逡巡していた。しかし、それを強く勧めた人物がいた。イギリスの王立協会のヘンリー・オルデンブルクである。王立協会は一七世紀に設立された科学者の団体で、世界最初の学会、もしくは化学アカデミーと呼ぶべき組織だった。王立協会は、専門官を各地に派遣して、新しい発見を行った人材を発掘し、その知見を公表・共有することを振興した。

オルデンブルクはまさにそのような外交官的役割を担ってたびたびヨーロッパを旅し、アムステルダムの訪問したとき、レーウェンフックの噂を聞きつけ、はるばる小都市デルフトに赴いて、レーウェンフックに自分の研究を公表することを強く勧めた。最初は逡巡していたレーウェンフックだったが、後に自分の研究成果を次々と王立協会に送り出した。オタクは自分の発見を自分だけの秘密にしておきたい一方、それを皆に自慢したい気持ちも同時に抱いているものだ。オルデンブルクは、レーウェンフックのそんな性格を見抜いていたのである。

レーウェンフックの顕微鏡は驚くべき精度と倍率を有しており、その観察も、ハルトソーケルの妄想に比べ、ずっと正確だった。現在、レーウェンフックが顕微鏡の始祖として、微生物や精子の発見者として科学史に名を残しているのは、王立協会に発表の記録が日付とともに残っているからにほかならない。

私たちのGP2研究も、小なりとはいえ同じような研究競争の最中にあったのだが、当時、私たちはそのことに気づいていなかった。

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