標準偏差Standard Deviation/ 標準偏差正規分布曲線
標準偏差 Standard Deviation
標準偏差は英語の頭文字をとってSDという。
バラつきのある集団の計測値が、
平均値を中心にどのくらいの偏差があるか
をもって表す数値なのである。
偏差とは、バラつきのある個と平均値の差である。
正規分布曲線を利用し、
矯正では、正常咬合者の計測値から得た
M±1SDをもって標準値としている。
統計的に考えると治療を必要とする人は32%ぐらい
ということになるけれども、
アメリカの例などから見ても
75%の子供が矯正治療を受けているのであり、
別の概念であるといえよう。
逆に正規分布で25%以内の人が正常咬合とみなしてよいであろう。
標準偏差正規分布曲線
偏差とは平均値よりバラつきのことである。
これを歯科の咬合ということに用いて考えてみる
とどうなるであろうか。
理想咬合というのは、
かつてナソロジーの言っていた絵に描いた咬合理論としよう。
このようなものは、世界に一人もいない
といわれている机上の空論であるが、
もしここに理想を求めたとすると、点の理論となる。
少しでも違うところがあれば理想とならないのであるから、
一点ということになる。
ところが少しぐらいの幅はあるのが当然である
と考えると面の話になってくる。
ナソロジーの言うような咬合はないのであるし、
顎は動くのであるから、
ある一点ではナソロジーの咬合理論はあっても、
動いたところでは完全に崩れるということになる。
だから、煙にまく理論として、
顎関節の中心に咬合理論の中心を持ってきたのである。
顎関節自体に自己運動能力はないし、
見えないから、後はいい加減に理論づけがなされた。
いまや発生地のアメリカにおいても、
ナソロジーの理論は否定されているのである。
このように完全な理想咬合はあり得ないし
運動ということを考えると、点で考えるわけにはゆかない。
そこで許容範囲をもって正常としたのである。
普通という言葉で言ったらよいのかもしれない。
この正常とされる範囲を68.26%に決定し、
そのバラつきの幅を1SDとして分布曲線に描いていったのである。
1SDの範囲の中に68.26%のものが入るということになる。
平均値より2SDになるようにしたところに
全体の95.46%が入るということになる。
これよりはみ出すものが4.54%ということであり、
これはもう例外的なものと考えてよい。
当然1SDの範囲でも1SDと2SDの境界近くのものは、
シビアにとれば治療する範囲に入るものも出てこよう。
しかし、この正規分布曲線を理解することによって、
病気の難易度や、易しい場合や難しい場合の判定もできることになる。
これを十分に理解することが、予後の判定に大いに役立つのである。
(DBAより)
DBAのまえがき(DBA主幹 阿部和弘先生の言葉)より
「このセファロ読本は一般開業医のためのものです。私は一般開業医こそ矯正に適した歯科医師であると考えています。全ての一般歯科開業医に矯正治療ができるようになっていただきたいと考えています。矯正治療を始めるにあたって、矯正にはセファロがどうしても必要なのだという考え方が蔓延している現状の中で、はたしてそうなのだろうかということです。分かりやすいセファロの本をと思っているのは、そのことをくつがえす必要があるからです。この「セファロ読本」は一般歯科開業医のための入門書として書き上げたつもりですが、完成してみると、これ以上詳しい内容の本は、現在ないことが分かりました。代表的なセファロの方法を全て載せてあるということも画期的なことです。このようにして、セファロ読本が出来上がり、再び読み返してみても、やはりセファロの重要性は感じることができません。
セファロは脇役であり、パノラマ以下の評価しかできないのです。
一般歯科開業医の人が矯正をするのにセファロがぜひとも必要とはとても思えません。
しかし、何故必要ないのかを知るためにも逆説的な言い方ですが、セファロのことを知っておくことも良いでしょう。無知と英知では英知が勝っています。知らないより、知っておくのがよいのです。使うか使わないかということは知っておいて初めて判断ができます。そういうことをまず理解していただきたいと思います。一般歯科開業医が矯正をするとき、ぜひとも必要なことは診断を正しくできるということです。診断の正しいことこそ大切なことです。
治療テクニックになりますが、顔の中心が美人の中心だということです。したがって、顔の中心と上顎の歯の中心との一致が必要なのです。上顎の正中線と下顎の正中線を合わせても、顔の中心に合っていないと、顔はゆがんでしまいます。 第一大臼歯をクラス1にすることも必要です。
特に10歳までの子供の時に、必ずクラス1の咬合の形にすることです。そして、料金を明確にすることです。信頼こそ大切なことなのです。
上顎と下顎の正中線を無理矢理に合わせることは、どうでもよい事です。このことは顔の中心に合わせることが大切で、上下顎の正中の一致はできればということぐらいのことで絶対という考えに立たないことです。
してはいけないことは小臼歯を4本抜歯することや、側方拡大による方法です。これはルンドストロームの1925年発表の歯槽基底論で解決済みのことです。それに逆行するテクニックではうまく行かないでしょう。ブローディのバクシネーターの理論も同じ様なことを証明しています。
ヘッドギヤーを使用してはいけません。このような中で、成人矯正では小臼歯の4本抜歯は行ってはならないことなのです。このような正しい考えの中で一般歯科開業医が矯正を行えば審美だけでなく機能的にも必ず社会に奉仕し、貢献できることになります。一般歯科開業医こそ、矯正に適した人であると、大いなる自信を持っていただきたいと思います。」
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