抜歯をして矯正すると4
抜歯をして矯正すると4:抜歯して矯正をすると次のような多くの問題が生じてくる。これはデメリットというよりマイナスのことなのである。デメリットとはメリットがないということであるが、メリットがないだけどころか大きなマイナスである。医療訴訟において問題になるのはマイナスを生じたときのことだけであり、マイナスになっていないことはクレーマーとしての問題になる。したがって、このようなマイナスになることには十分に気をつける必要があるのである。
空隙が残る:わずか4ミリか6ミリのディスクレパシーをもって、小臼歯の4本を抜歯するのである。1本の小臼歯の幅は8ミリぐらいだから、2本抜歯すると16ミリの空隙となる。4ミリ不足だから16ミリから4ミリ引いても12ミリもの空隙が残る。6ミリ不足の時でも10ミリの空隙が残る。Eラインといっても、1ミリ、2ミリを気にするわけだし、ディスクレパンシーの4ミリの3倍の空隙が残るわけだから、これらは過剰診療の何物でもあるまい。しかも、大臼歯を歯体移動によって前に持ってこれないわけだから、そこは傾斜移動で誤魔化す。するとコンタクトポイントもおかしくなり、その下に空隙が残る。小臼歯を4本も抜歯する抜歯矯正においては、空隙が残るのは仕方がないことである。少なくとも50%以上の症例には空隙が残る。したがって、食事がしづらく、いつも歯間ブラシか爪楊枝が必要になるのである。これが若い時から死ぬまで続くのである。人前で爪楊枝を使う姿はエチケットからもよくない。しかし、気持ちが悪いため、ついつい爪楊枝ということになるのだろうが、お家が知れるということになり、下品になってしまうことになりかねない。
上下顎前歯の舌側傾斜:小臼歯を4本も抜歯すると、現在の抜歯矯正の基準より10ミリ以上の空隙が残ってしまう。これは今まで説明したように歯体移動で動かすことは難しく、空隙が残ってしまう。そこで誤魔化しの一手として、マスで後方に牽引してという方法がとられている。つまり、傾斜移動で前歯部の4本、上下で8本を舌側傾斜させるのである。建て前は、セファロ分析により下顎前歯を整直させ、セファロの分析としてツィードの三角やFMIA角のことを言っているけれども、それは机上の空論に近い。そのため、実際は舌側に傾斜させるという方法によるのである。セファロ分析などというのは後付け講釈みたいなもので、セファロなど分析していなかったらからこそ、ツィードはどんどん抜歯としていた事実をどう説明するのであろうか。非抜歯による方法をできるだけ取るべきだというアングルを非難し、抜歯を勝手に行なっていたツィードが正しいというのは科学的な倫理としてはおかしいのである。
大臼歯の近心移動が生じる:矯正治療を考えるとき、年齢のことを必ず考えないといけない。12歳までの混合歯列期は成長の最も盛んな時である。この年齢の時は、不正咬合において、歯ならびを正しくすることはとても簡単であり、3ヵ月から6ヶ月で主訴は治すことが可能である。この年齢の時は歯根は完成されていないし、骨も成長中で軟らかく、柔軟性がある。このとき、不用意に抜歯をするならば、大臼歯は近心に移動してくる。乳歯だから抜いてもよいのではなく、乳歯だからこそ抜いてはいけないという考えに立たないといけない。成人になっての抜歯で大臼歯が近心に移動することはない近心に倒れ込んでくる近心傾斜になるのである。近心移動と近心傾斜は異なるものであり、その違いを知っておかなくてはならない。なお、咬合歯列期、つまり12歳以前の矯正の問題点も多くある。それはエキスパンジョン付きの床矯正であり、この方法も抜歯矯正に匹敵する悪い方法である。このことは別の本に一冊にまとめてあるのでご一読願いたい。
(続く)(DBAより)
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