拡大ネジによる床矯正は危険
この本のはじめに:この本は、拡大ネジによる矯正に対する警告書である。小児歯科やGPの間で行われている拡大ネジによる床装置などの矯正行為は問題のある行為であるということである。世の中の変化は激しく、今までと一変してきていることは多くある。医療訴訟についてもである。アメリカが世界基準として、グローバルスタンダード(ワールド・ヴァリューズ)となってきた中で、アメリカの姿から多くを学ぶことができる。現在は医学の分野において、エビデンスということが盛んに言われている。エビデンスの基本は有用性ということであって、それが95%以上をもってするというのがコンセンサスになっている。95%以上成功しないものはエビデンスがなく、行ってはいけないことになると考えてもよいだろう。薬害被害の裁判が後を絶たない。それどころか、豚インフルエンザの世界的な騒動をみても分かるとおり、普通のインフルエンザと違わないように見えても、万が一のことを考えて予防、予防とマスクや手洗いの奨励を行っている。このような中で、拡大ネジによる2次元的な手法の床矯正による治療と称するものが、エビデンスのるものなのかどうか。そこの点を考えず、ただおカネ儲けのために行っているとしたら甚だ問題なのである。拡大ネジによる臼歯部を拡大する方法は、とても医学とはいえない危険な行為であることに気がつかないといけない。これは解剖学や生体観察などによっても理解できるし、生理学や発生学などによっても分かる。医学的知識があれば、床拡大装置というやり方は間違った方法であるということは分かるはずだ。問題は咬合を壊していることである。床装置を2年間装着し、改善するどころか悪化させたという症例の事実を多く見てきた。歯科医の無知と欲が国民を不幸にしてきているのである。治るメドも治せるメドもないのに、矯正と称し、拡大ネジで拡大だけしたら、とんでもないことが生じることは明白である。拡大ネジによる床矯正を行っている者で私の指摘に反論できる人がいたらお目にかかりたい。いないはずだ。せいぜい彼等が言うとすれば、治るケースもあるという言い逃れであり、診断を正しくすればという条件つきであろう。しかし、成長期にある子供の将来を正確に予測などできない。いつから易者の世界に歯科が入り込んでしまったのか。歯ならびにしても顔にしても変化するためのファクターが多すぎるるし、どれがどの程度関与しているのか全く知るすべがない。環境と遺伝が重なり合っているのであるから、予測は不可能なのである。したがって、矯正に予防という言葉はありえないことになる。対症療法によることこそ正しい方法である。したがって、6歳、8歳、12歳という年齢での検査によっての対症療法こそベストではないのか。少なくとも、床矯正の目指している年齢で言えばである。第2大臼歯が萠出してからでは手遅れのケースになることも多い。したがって、混合歯列期における検査により、対応してゆくことこそ、時間的、経済的な負担も少なく、しかも自然に逆らわない成長に任せるという、最も正しい方法になるだろう。できないことをできるように言うことをイカサマというが、顔面育成とか咬合誘導というのはイカサマくさい話なのである。遺伝的なことを無視し、一つの型にはめることが間違っているわけであり、人工的なものは自然のものとは全く違うということである。異常のものを早期に発見し、大事に至らない前に正常に戻すというのが医療であり、医師としての務めである。拡大ネジによる床矯正という方法が根本的に問題ある方法であり、すれ違い咬合など大量に生じている。元々正常なものを予防するといって、逆戻りできないようなすれ違い咬合をつくることこそ、罪作りな話なのである。将来がある子供を不幸に導く悪魔の主であると思えるからである。このことに、患者側が気がついたとき医療訴訟にも負けるであろう。正しいことを正しく行うとは、エビデンスに基づく、95%以上の有用性のある行為である。そうでなく、逆に悪くし、人生そのものに問題を生じることは断じてしてはならないのである。医聖ヒポクラテスは偉大である。今一度、ヒポクラテスの誓いの原点に戻って医業をすることが必要なのではないか。
「DBA間違いだらけの床矯正 」より。
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