今年3月、青森県八戸市の「みちのく記念病院」精神科病棟に入院していた同市の高橋生悦さん=当時(73)=が殺害された事件で、病院側が「死因は肺炎」とする死亡診断書を遺族に渡していたことが12日、分かった。東奥日報の取材に遺族が明らかにした。司法解剖の結果、高橋さんの死因は、暴行による頭部や顔面の損傷と判明、死亡診断書の内容と異なっており、高橋さんの妻(62)は「経緯を知りたい。病院はしっかり説明してほしい」と語る。
県警によると、3月12日午後11時45分ごろ、巡回中の女性看護師が、ベッド上で顔から血を流して倒れている高橋さんを発見。翌13日午前10時10分に死亡が確認された。県警は28日、高橋さんの首を手で絞め、歯ブラシで突き刺すなどして殺害したとして、同じ病室に入院していた男を殺人容疑で逮捕した。
遺族によると、亡くなる数分前に病院から電話があり「院内で転んだ」「酸素吸入を始める」との内容だったという。その後、亡くなったとの電話を受け、13日正午ごろ病院に到着。遺体が乗せられた搬送車に同乗するよう促され、葬祭場に着いた後、初めて遺体と対面した。鼻以外は包帯が巻かれ、納棺師に傷口を処置してもらったが、出血が続いたという。
病院の医師が作成した診断書は搬送車に乗る前、病院職員から受け取った。死因の欄には「肺炎」と記載されていた。高橋さんの妻は「肺炎が死因とは信じられないと思っていたところ、警察から『事件の可能性がある』と連絡を受けた」と振り返る。
遺体は13日夜、司法解剖のため警察に引き取られ、死因は暴行による頭部や顔面の損傷などとされた。司法解剖が行われずに遺体が火葬された場合、死因は「肺炎」のままだった可能性がある。
高橋さんは認知症を発症し、数年間は家族が支えながら自宅で暮らした。入院していた市内の病院から昨年11月下旬、みちのく記念病院に転院。新型コロナウイルス対策のため面会できず、家族が高橋さんと対面したのは転院時が最後となった。
高橋さんの妻は「3月12日夜にすぐ連絡をもらえれば、死に目に会えたかもしれない。亡くなるまで10時間余り、病院の職員がどんな気持ちでどんな治療をしたか知りたい」と話す。
東奥日報は、事実関係を確認するため、みちのく記念病院に取材を試みたが、病院側は「捜査が続いている。お答えできない」としている。