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<医療の値段 環流する票とカネ>~歯科医師会は????


「政治が報酬の配分に介入」衝撃受けた日本医師会 組織内候補の得票で自民党への貢献度を競う各団体の構図

2023年7月20日 06時00分
<医療の値段 環流する票とカネ>
 日本医師会(日医)名誉会長の横倉義武らの巻き返しで、改定率プラス0.43%(国民医療費ベースで約1890億円)で決着した2022年度の診療報酬改定。医療費の枠は増えたものの、日医関係者に衝撃を与えたことがあった。

◆看護師対象の「別枠」、初めて使い道を指示され

 コロナ医療や救急医療を担う医療機関の看護師を対象に、収入を3%(月額平均1万2000円)引き上げるための診療報酬が特例的に盛り込まれたことだった。
 診療報酬は医科・歯科・調剤に分かれ、改定率の決定後、各医療行為の点数(1点10円)は、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で議論する。それが22年度改定では、当初から看護師の賃上げに0.2%を割り当てると、いわば「別枠」で決まっていた。医療関係者が話す。
 「今まで看護師らの給料は、病院に入ってくる医科報酬から分配していた。病院にいろいろな職種がある中で、特定職種だけを賃上げせよというのは異例だ。財務省にしてみれば『そっちに渡したら好き勝手に使うでしょ』ということだろうが、それでは医科報酬の使いみちを自分たちで決められないことになる」
 日医元幹部も「これまで医科報酬の配分を政治が決めることはなかったのに、そこへ介入してきた」と眉をひそめた。日医前会長の中川俊男が退陣を表明した昨年5月の会見で、「参院選での組織内候補の得票数が診療報酬改定の決定に直結する」と発言したのは、この看護師の賃上げが念頭にあったのでは、と推測する。
日医定例代議員会で新たに常任理事に追加で任命された4人に、会場から拍手が送られた=6月25日、東京・本駒込の日本医師会館で

日医定例代議員会で新たに常任理事に追加で任命された4人に、会場から拍手が送られた=6月25日、東京・本駒込の日本医師会館で

 組織内議員 業界団体や労働組合などが、掲げる政策を実現するために擁立する国会議員や地方議員。団体や団体の政治連盟が推薦する。組織内候補を出しているのは全国郵便局長会や日本建設業連合会、全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)、全国商工政治連盟、自治労、日教組、電力総連、自動車総連など多数ある。

◆19万票獲得の日看連議員 安倍晋三元首相を動かす

  19年の参院選。日本医師連盟(日医連)の組織内議員・羽生田俊はにゅうだたかし(75)は再選したものの、約15万2800票と前回より約9万7000票も減らした。一方、「日本看護連盟」(日看連)の組織内議員・石田昌宏(56)は約19万票を獲得して医療系候補のトップで再選を果たし、党内での存在感を増している。
 「得票数が診療報酬改定にどの程度影響があったかは分からないが、ゼロではないだろう。それはどの業界も同じだ。票が減れば、党への貢献度が低いと判断される」(医療関係者)
 20年4月3日、参議院本会議。東大医学部出身で、男性看護師として初の国会議員の石田が代表質問に立ち、コロナ禍で差別や偏見に苦しむ医療従事者の窮状を訴えた。日看連の関係者が振り返る。
 「医療従事者が疲弊しながら命がけでやっていると訴えた4日後に、初の緊急事態宣言が出て安倍(晋三)首相が冒頭に医療従事者への感謝を口にした。あれでフェーズ(局面)がオセロゲームのようにガラッと変わり、世間の関心が看護師に向いた。議員の質問が総理の言葉を引き出したと思う」
 日医元幹部は「石田さんが当選してから連盟は政治的な動きに非常に敏感になった。全国の動きが活発になっている」と警戒する。

◆強すぎる官邸、勝手に決められないように

 今年6月25日、東京・本駒込の日本医師会館で開かれた日医の定例代議員会。三十数年ぶりに増員された4人の常任理事が紹介された。主に日医の組織強化と医政活動を担う。日医の幹部が打ち明ける。
 「官邸が強くなりすぎて事前の相談なしにいろいろなことを決めている。都道府県の医師会長らと連携して、国会議員に医療現場をよく理解してもらうために体制を厚くした」
 厳しい財政事情で、医療費というパイの取り合いが激しさを増す中、年末の診療報酬改定に向け、日医連は政治力強化を図る。(文中敬称略)
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 新型コロナウイルス禍で、病院にかかれない「医療難民」が街にあふれ、脆弱ぜいじゃくぶりが露呈した日本の医療提供体制。国民皆保険制度も存続の危機にひんする。長年改革が進まないのはなぜか。年末の診療報酬改定に向け、議論が活発化する中、票とカネが絡み合う改定の舞台裏を検証し、改革を阻んでいる要因を探る。(文中敬称略=杉谷剛、中沢誠、奥村圭吾が担当します)