抜歯をして矯正すると・・2 DBA「間違いだらけの抜歯矯正」より
抜歯をして矯正すると・・2
抜歯して矯正をすると次のような多くの問題が生じてくる。これはデメリットというよりマイナスのことなのである。デメリットとはメリットがないということであるが、メリットがないだけどころか大きなマイナスである。医療訴訟において問題になるのはマイナスを生じたときのことだけであり、マイナスになっていないことはクレーマーとしての問題になる。したがって、このようなマイナスになることには十分に気をつける必要があるのである。
前歯部の被蓋が深くなる(深いと顎関節症になりやすいといわれる) 小臼歯を4本抜歯する抜歯矯正はいろいろのことに問題が生じている。前歯部がオーバーバイトになりやすいのも、抜歯矯正に起こる。犬歯をもってくるのが簡単だからとか、第1と第2の臼歯はよく似ているから美容上に関係がないとかということで、第1小臼歯の抜歯を行っていることはご存じのところだ。ところで、こんな基準で小臼歯を抜歯して良いのであろうか。小臼歯は2つあるから要らないもののように見えるけれども、大切な歯だからこそスペアとして2つあるとも言える。また、人間の原始人とも言えるケニアのボイセイ猿人の歯を見ても、大臼歯と小臼歯が同じくらいの大きさで大切な歯であることが分かる。また赤ちゃんとして誕生した時からずっと見て行くと、この歯は特別の歯の位置占めていることが分かる。このことが分かれば小臼歯はとても抜く気になれないし、オーバーバイトになることも分かる。その他、顎関節症にもなり易い。アメリカの矯正学会や有名な矯正家の話としても、顎関節症を作り出していたのは抜歯矯正をしていた矯正専門医であることが分かる。
老人性の顔になる 老人性の顔についてはGPの方が知識が多いだろう。若い人を対象とし、歯があるのを動かす矯正医と総義歯までも含め老人に接している一般歯科のGPとでは、その知識の量がまるで違う。総義歯を作るとき、若く見えるためにはどうするかということを考えてみて頂きたい。逆に老人顔とはどういう顔かということも分かる。年齢より若く見える人は健康で元気であり、年齢より老けて見える人はあまり健康でない人が多い。それゆえにアンチエイジングということに注目が行っているのである。歯の数が少なくなると老化が進むことは、歯科医なら常識として認知しているはずだ。歯がなくなった人の顔を見て頂きたい。若い時の顔といろいろのところで違っているが、口輪筋の緊張がなくなり、内側に引っ込むことであるこのため、鼻の下から口元にかけて縦のシワが出やすくなる。かつて老人をマンガ等に書くときの代表的な表現としてこのシワを書いてる。それと同時に法令線が深くなる。それに続いて口角から顎にかけてのシワが出てくる。唇は上顎の唇が内にめくれ込み、薄くなる。下顎より上顎の方が歯を失った時に歯槽骨の吸収が大きいこのため総義歯の患者などは受け口の人のように下顎の方が、上顎より随分に大きい。人工歯の配列をはじめ、総義歯を難しく感じるのは、このような咬合関係を見た時であろう。口元は脂肪がなくなり皮膚に弾力がなくなる。このように老化は1年1年誰でも進行するわけである。したがって、今の若い時を基準にして考えることは大いなる後悔を与えることになろう。人生は一度限りで後戻りができない。しかも、矯正する年齢と残りの年数とを考えるとき、はるかに後の生存年数が長いはずだ。この人生を幸せに生きてゆくためには、今だけでなく、残りの人生を健康に幸せに生きるプランがなくてはなるまい。歯を抜くということは老人性の顔にもなり易いし、年をとる程このことが目に見えてくる。それとともに、健康にも問題が出てくることを忘れてはならないのが歯科医師である。
(続く)(DBAより)
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