抜歯をして矯正すると・・3
抜歯をして矯正すると3: 抜歯して矯正をすると次のような多くの問題が生じてくる。これはデメリットというよりマイナスのことなのである。デメリットとはメリットがないということであるが、メリットがないだけどころか大きなマイナスである。医療訴訟において問題になるのはマイナスを生じたときのことだけであり、マイナスになっていないことはクレーマーとしての問題になる。したがって、このようなマイナスになることには十分に気をつける必要があるのである。
歯が傾(かたむ)く :小臼歯を抜歯すると、そこに大きな空隙ができる。この空隙を埋めるためにいろいろのことが行なわれる。一般的にはブラケットとワイヤーを使い、オープンコイルやパワーチェーンを使用したり、ワイヤーベンディングをする。顎間ゴムを使用したり、その他補助的な物を使用したりする。ともかく、抜歯したからには残った大きな空隙の封鎖をすることに努力をしなけくてはならない。ところが、限界がある。歯の大きさはそれぞれ異なるし、顎の形にしても異なる。その他、いろいろの制約がものすごく存在し、それを検査したり、事前に調べ出すことは不可能だ。その上、歯は歯槽骨に植わっている上に歯の根の数も大きさもすべて異なる。そういうことだから、大体の予測はできても、完全に予測することはできない。やってみないと分からない部分があり、経過を見ながら考えて治療方針を立てるのである。目指す目標にそのような形でゴールしてゆかないといけないわけだ。したがって、全ての歯を歯体移動で思い通りに動かすことはできない。部分的に傾斜移動になり易い。特に大臼歯においてはそうである。歯を抜いたからには、完全な咬合関係は放棄したのと同じことだから、傾斜したものになったり、隙間が残ったりしたものになるということは覚悟しておかなくてはならない。歯を抜いて、人工的に完全な安定した咬合などを得られないということを認識することである。
咬頭干渉が生じる : 前歯部の咬み合わせと臼歯部の咬合とは役目も働きも形も異なる。人の歯列弓は3つに分かれている。前歯部の中切歯と側切歯の片顎4本、上下顎で8本と犬歯の上2本、下2本の4本、臼歯部の上8本、下8本の16本である。前歯部のところは丸いカーブになっているし、臼歯部のところは直線になっている。犬歯はその中間にあって、形も働きも全く別のものである。犬歯は武器であって、食べ物をこなすことなどの働きはしない。動物がかみつくのも犬歯の牙であって前歯ではない。その武器として最強の効果があるようにと人間以外はすべt反対咬合になっている。ゴリラなども誠に大きな犬歯をもっている。爪とか牙は武器なのである。残りの歯が食事や発音に関係している。前歯は形が丸く、咬み切るのに都合よくできている。それと発音である。発音は舌が大きな役目を持ち、この舌の位置によって発生音が異なってくる。舌の形は先が丸い。したがって、その部分に当たる前歯部は丸くしないといけないのである。臼歯部は直線である。特に内側が直線である。これは舌の形が直線であるからだ。要するに、舌が運動いやすいように舌の形になっていると思ったらよい。こういう形になっていないと機能障害を生じる。しかし、小臼歯を4本も抜歯すると口腔内容積は小さくなり、舌も自由に動けない。大きな空隙を封鎖したいために傾斜移動になる。このため、臼歯部の咬合は不完全なものとなり、一歯対二歯の関係は望めず、異常咬合となる。咬頭干渉も当然生じるからぺリオの進行も起こることになる。
歯根の吸収を生じる :小臼歯4本も抜歯すると、前歯12本の全てを移動させないといけない。ほとんど、そう生のないものまで抜歯するわけだから、8ミリぐらいの移動量が必要となる。歯根部には神経が来ているのであるから、その神経を守るために歯根の吸収をしなくてはならない。また、動かす距離が大きいのと、強制力が強いということも歯根吸収の原因の一つである。正中の一致という、まことに馬鹿げた理由だけで、健康を犠牲にしているのを忘れている。正中の一致など、全体の3分の1以下というのが人の口の中の実際なのである。それを無理に人工的に、歯を上下で4本も失ってまでしようとすることこそ、馬鹿げた行為の何物でもない。上下の正中の一致は美容上も、咬合上も、あまり意味のないことなのだ。それより健康のことを考えないといけない。(DBAより)
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