医療訴訟関連シリーズ#1
医療訴訟関連シリーズ#1 医療訴訟 今回からは歯科医にとっても患者さんにとっても嫌な問題を論じることになる。これはある意味避けて通れない問題ではある。DBA「間違いだらけの抜歯矯正」より(歯科医師向けの文章であることは肝に銘じてお読みいただければ幸いである。):アメリカでも1980年ごろまでは、抜歯矯正の全盛であった。ベッグ法に至っては全症例抜歯するという手荒い方法であった。しかし、歯ならびを治しても、小臼歯を4本抜歯したのでは老人性の顔になってしまう。アンチエイジング、つまり若さが主張されるようになると、小臼歯の4本抜歯こそ問題ある治療法となった。1980年代からのアメリカでの医療訴訟は、抜歯を多くした症例での勝ちは歯科側にはなくなった。過剰診療であり、抜歯すれば2度と元に戻すことはできない。つまり抜かなくてもよかった歯を抜いて、若さがなくなってしまったと主張されたら反論の余地はない。小臼歯を4本も抜歯したから、顎関節に負担がかかって、顎関節症になったと言われても困る。矯正治療をしたために顎関節症になったということではないし、そのことだけでは裁判に負けていない。しかし、抜歯をしていると、抜歯に原因があると判断されることもあり、歯科医側は不利になる。そこまで考え、対応してゆくことが求められる。歯を抜くという行為は外科的手術であり、歯にとっては死刑宣告なのである。その診療は慎重のうえにも慎重でなくてはならない。クレーマーのつけるクレームはとても厄介であっても、どちらに分があるかである。間違ったことをやっていなければ堂々と受けて立てばよいことだが、そうでなければ困ったことになる。歯を安易に抜歯すればこれからは医療訴訟になることも覚悟しておくことだろう。それは嫌なことだろう。それなら歯を抜かなければ良いのである。より具体的な検査や遺伝などの全てを考えに入れ、どうしても抜歯が必要なときにだけ歯を抜くというのが原則である。歯を抜けば、歯を動かすのは簡単である。しかし、その後の予後のことを考えると、歯を抜いて取り返しのつかないことが多く生じている。この取り返しのつかないことの恐ろしさをもう少し感じなくてはならない。1981年に出されたワシントン大学のホワイト教授の論文は、ツィード法をことごとく覆すものであった。これを証拠と学問的な根拠として裁判を起こされたら、抜歯矯正はひとたまりもない。既に1981年に出されている論文であり、アメリカでは常識となっている。DBA「間違いだらけの抜歯矯正」より(歯科医師向けの文章であることは肝に銘じてお読みいただければ幸いである。)
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