「自民党と統一教会」松尾の『ちょっと違和感』より
「自民党と旧統一教会
関係は究明されないのか
自民党と、宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の「一体ぶり」が、日に日に可視化されている。国会議員の元に送り込まれた旧統一教会の関係者が、ほぼ無償の形で議員事務所を手伝い、彼らはお互いに連絡を取り合い、教会本部に報告する。もちろん、選挙の時には信者を動員して運動を繰り広げるので、国会議員とは切っても切れない間柄となる――。そんな情報が流れている。 また、国会議員が旧統一教会の関係者から講演やスピーチを頼まれ、機関紙に登場したり、祝福のビデオメッセージを送ったりして、多額の報酬をもらうという話もある。これらが事実ならば、旧統一教会の主張する社会のあり方と、自民党が成立を目指す法案や政策に共通点が多く見られるのは、さもありなん。 母親が旧統一教会の信者となり、多額の献金をむしり取られて家庭が崩壊し、その恨みを旧統一教会とのつながりが深い安倍晋三元首相を銃撃することで晴らそうとした、と供述していると報じられている容疑者の蛮行によって、期せずして自民党や、その他の政治家との関係に対して、再びにわかに光が当てられるようになった。有田芳生氏によれば、1990年代の松本サリン事件や地下鉄サリン事件を引き起こして社会を大混乱に陥れたオウム真理教の後、警察は「次は統一教会問題に着手する」と明言していた。ところがその後、一切捜査も調査も家宅捜査も行われることはなかった。先日、テレビ朝日「モーニングショー」に出演した有田氏は、その理由を「『政治の力で止められた』と警察幹部が証言している」などと表明した。 ようやくこの問題を大手メディアも避けられないと判断したのかと思っていたら、翌日(この原稿を書いている日)の番組では触れなくなってしまった。「どこか」からのプレッシャーがかかったことは想像に難くないが、あまりにもあからさま過ぎないか。かつて、稲田朋美衆院議員は「国民の生活が大事なんて政治は間違っていると思います」と明言したが、なるほど、「そんなもの」が大事だったのかと気づかされる。 以前、「こども庁」の名称案が「こども家庭庁」に変更された時、その違和感について書いた。被虐待経験を持つ有識者も「この場合『家庭』は必ずしも良い意味を持たない。また『子どもと家庭は常に一つ、分けられないもの』ということにしてしまうと、子どもが直面している困難が家庭そのものであった場合、逃げ場がなくなってしまう。ここは『こども庁』とすべきだ」などと推言した。自民党の勉強会は「こども庁」との案でまとまったのに、党本部に却下された。旧統一教会と関係があると指摘される団体がホームページで「心有る議員・有識者の尽力によって、組織の名称が『こども庁』から『こども家庭庁』になりました」とアピールしている。自民党が旧統一教会の要請に従って名称変更したのではないかと疑ってしまう。 元文部科学事務次官の前川喜平氏は「安倍晋三氏の横死を無駄にしない唯一の道は、統一教会と政治家の癒着した関係を清算することだろう」と喝破している。政権党の政治家として「特定の宗教団体」にお墨付きを与えてしまっていたことは紛れもない事実だ。ここまで「鮮明」に見えてきた自民党と旧統一教会の関係が究明もされない状態で、権力者の横暴から国民を守る憲法をいじる議論が、その自民党の関係者によって進められてしまう状況は、恐怖と絶望以外の何ものでもない。 岸田文雄首相は、安倍氏の国葬を執り行う意向を表明した。国葬の定義や対象などの規定は存在しないとはいえ、あれだけ国民の分断をあおり、国会で3桁にものぼる虚偽答弁をし、数々の疑惑を抱えたまま死去した政治家を、「憲政史上最長にわたって首相を務めた」という理由以外には積極的に推す材料もないのに、なぜここで国の名において国費で葬儀を執り行うという勇み足の表明をしてしまったのかが謎でしかたない。「聞く耳を持つ政治家だ」と自慢していたことからしても不可解だ。追悼、弔意はそれぞれの意思で安らかに行うべきであり、ここで新たな火種を生み出す必要もないのではないか。(放送タレント、イラストも)=7月19日執筆 」より
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