たとえば、現行の不公平な税制を国民に隠したままでの「消費税増税」ひとつを取り上げてみても、
日本政府の政策が、
日本国民のための政策ではなく、
どこか不可解で偏っているのは、どういう事情からくるのか、という事で、その幾つかの要因の一つとして、「アメリカ政府」を挙げました。
http://ameblo.jp/hirumemuti/entry-11150713510.html
以前のブログでも触れましたが、
日本の政策は、アメリカ政府からの「対日要求」どおりに実現されてきた事を、関岡英之氏による労作で、私たちは知ることができました。
http://ameblo.jp/hirumemuti/entry-11156199954.html
ところが、そのアメリカの政治自体も、
アメリカ国民のほうを向いたものではなく、
偏(かたよ)っていて私物化されているのではないか、
と書かせてもらいました。
しかも、そのアメリカ政治も、
いくつかの手段により、買収や私物化が成立してしまっている、
と書きました。
そこで今回は、
その私物化をもたらしている一つである「回転ドア」について、
見ていきたいと思います。
日本では、「天下り」という利権構造が取り沙汰されるどころか、
「天下り利権構造」へのメスを希求する民意を、
”票稼ぎ”として利用され、裏切られて、久しくなります。
ところがアメリカには、
「回転ドア(リボルビング・ドア)」という、
業界の利益体現構造があります。
この「回転ドア」というのは、
ホテルなどにある「回転ドア」よろしく、
政府や官庁と民間との間を、行ったり来たりするからです。
(政府要職(や官僚スタッフ)⇒民間(企業)⇒政府要職(や官僚スタッフ)⇒民間(企業)
http://markbrennanrosenberg.blogspot.com/2011/09/as-revolving-door-of-men-turns.html
日本における「天下り」が、省官庁から、民間企業や独立行政法人の外郭団体への「天下り」という上か下への”一方通行”であるのに対して、
アメリカの「回転ドア」は、
政府と民間との間を、「回転ドア」のように往来(おうらい)して、
日本の天下りの一方通行という訳ではありません。
「回転ドア」の例は、枚挙に暇(いとま)がありません。
たとえば金融面での「回転ドア」いえば、
”サブプライム・ローン”バブル経済をもたらす素地(1999年の「グラム・ブライリー法」)をもたらしたロバート・ルービンは、
クリントン政権に入閣して財務長官をつとめる前は、
ゴールドマン・サックスのCEOでありました。
クリントン政権をでた後は、
シティ・グループの経営執行委員会会長をつとめ、
2000年の00年代のアメリカのバブル経済を盛り立てていました。
そのルービンの後を継いで、
財務長官をつとめたローレンス・サマーズは、
クリントン政権で、ルービンの後の財務長官を務めた後は、
ハーバード大学に学長として復帰し、
しかもスキャンダルで大学を追われて、
ヘッジファンドで取締役に就き、
週休520万ドルを得たり、一回20万ドルぐらいの講演をして、強欲をきわめながら、ルービンやグリーンスパンFRB議長(当時)と結託して、ヘッジファンドによる暴走を許すような、金融に関する規制緩和を緩めたりして、アメリカをはじめ世界を、金融危機に導いた張本人の一人であるのもかかわらず、今度は、オバマの任命により(選挙中は、サマーズに対しても批判していたのに!)、ホワイトハウスの経済諮問会議議長に就任しています。
現在に関する事例としては、
オバマ政権のティモシー・ガイトナー財務長官は、
ダートマス大学を卒業後、
キッシンジャー・アソシエイツに1985年に就職。
1988年に財務省に入省し、
1999年には国際担当の財務次官補に昇格して、
ルービン財務長官、つづくサマーズ財務長官の下で働きました。
2001年に下野して、2003年にアメリカの中央銀行にあたる”連邦準備銀行(FRB)”の一角である<ニューヨーク連邦準備銀行>の総裁に就任します。
日本の中央銀行にあたる日本銀行にしても、
アメリカのFRBにしても、
イギリスのイングランド銀行にしても、
どこの中央銀行にしても、
その株式を上場している”民間法人”でありまして、
その事から、中央銀行は、厳密な意味では「民間」になります。
00年代のアメリカのバブル経済をもたらす素地を用意した、クリントン政権のルービンとサマーズの新旧財務長官の下で子飼(こが)いされていたガイトナーは、
2005年から5年間、ウォール街の中心で、
バブル経済を展開している銀行家やヘッジファンドのトップたちと日常的に情報交換し、頻繁に食事やパーティを通じて、人間関係を築いていたのでした。
「デリバティブで巨額の資金を調達した[ルービンの]シティグループは、
結果的にアメリカの住宅バブルを煽(あお)ることとなった。
アメリカの不動産価格は急上昇し、
2004年頃からは明らかにバブルの様相を呈していた。
しかし、ガイトナー氏は
そうしたウォール街のマネーゲームの行き過ぎに対して、
警告を発し、流れを変えるべき立場にいたにもかかわらず、
『そのような危険がまったく存在しない』とするレポートを発表し、
金融機関と手を携えてアメリカの住宅バブルをさらに膨らませる後押しをしたのである。」
(浜田和幸『オバマの仮面を剥ぐ』(p.83)より)
リーマン・ショックをもたらした金融機関を、
オバマ政権で財務長官に任命されたガイトナーは、
アメリカ経済を崩壊させた張本人である金融機関を、
案の定、救済するのでした。
また軍需産業面での「回転ドア」でいうと、
「回転ドア」の権化であるドナルド・ラムズフェルドを、
挙げることができます。
ラムズフェルドは、
ニクソン政権~フォード政権で、
大統領首席補佐官や国防長官などを務めた(1971~77年)後、
世界的な製薬会社GDサール(現在はモンサントの子会社)社に会長として迎えられて、
1985年まで経営トップの座に就いています。
GDサール社は、
ラムズフェルドの政府コネクションを頼りにして、
「アスパルテーム」の政府認可をしてくれる者として迎えたが、
当のラムズフェルド自身も、
そのことを熟知していたようで、
「”なじみに連絡して”年内にはアスパルテームを認可させる」
と豪語したようです。
実際にラムズフェルドは、
ワシントン関係者とのコネクションを利用して、
食品医薬品局(FDA)に、
「アスパルテーム」の販売を許可させたのでした。
人工甘味料「アスパルテーム」という危険物質http://ameblo.jp/hirumemuti/entry-11148656874.htmlを、
政治コネを利用して、
食品医薬品局(FDA)認可させたばかりでなく、
ラムズフェルドには、さまざまな顔、いや、様々な役職を兼務していました。
米国国防大学理事や米国経済委員会委員・・・・、
軍需産業面では、
エンジン製造メーカーのベンディックスの重役や”軍事シンクタンタンクの<ランド・コーポレーション>”の理事長として、
レーガン政権で国防長官をつとめたフランク・カールッチと二人三脚で、
巨大軍需産業のロッキード・マーティンと連携をとりながら、
ロッキード・マーティンが製造するミサイル防衛兵器を、
アメリカ政府に売りつけるべく、
イランや北朝鮮の危険性を強調しながら、
ミサイル防衛の必要性を認めさせるために、
アメリカ議会に”圧力をかけていた”(「弾道ミサイル脅威評価委員会(別称:ラムズフェルド委員会)」委員長)のでした。
やがてラムズフェルドは、
ブッシュJr.政権で、また国防長官に任命されて就任します。
ブッシュJr.政権で言えば、
アタマが空っぽのブッシュJr.を操っていた黒子(くろこ)役をはたしていたのが、副大統領のディック・チェイニーだったのですが、
このチェイニーが、
ラムズフェルドを国防長官に選んだのですが、
このチェイニーは、
ニクソン政権時代に、ラムズフェルドが経済局長に就任した時に、
ラムズフェルドが自分の補佐官/部下として抜擢したのが、
このチェイニーだったのです。
しかも同時期に、チェイニーの妻リンが、
ロッキード・マーティンの重役に就任しています。
チェイニーも、「回転ドア」の例にもれず、
フォード政権で大統領首席補佐官となり、ブッシュSr.政権で国防長官、
民主党のクリントンが大統領をしていた時期は下野(げや)して、
1995年から2000年まで、
アメリカのハリバートン社でCEOに就いていました。
ハリバートンは世界最大の石油掘削機の販売会社であり、
イラク戦争後のイラクの復興支援事業や、
アメリカ軍関連の各種サービスも提供していることから、
湾岸戦争とイラク戦争で巨額な利益を得る、戦争と深い関係をもった企業であります――ちなみにチェイニーは、ハリバートン社の最大の個人株主――。
軍事シンクタンクの<ランド・コーポレーション>に関していえば、
カーター政権時代に国防長官であったハロルド・ブラウンは、
<ランド・コーポレーション>の理事に就きつつも、
その一方ではカルフォルニア工科大学の学長、
またIBM社の重役として、
軍事用インターネットの構築に携わっていたのでした。
それは閣僚に限らず、官僚レベルでも、軍需産業と国防総省との間に、多数の人間が、頑丈な利権コネクションを形成してきたようです。
そうして、数々の人材が、軍需産業と国防総省との間を往来する「回転ドア」には、
”軍需産業とペンタゴンとの、それぞれの資料や知見が行き来するメカニズム”が、出来上がるのでありました。
さて、そうした「回転ドア(リボルビング・ドア)」利権構造とは何なのか。
それは
、
企業の意向が、
政治や政策に、
直接に反映されるメカニズム
なのであります。
(つづく)
(参考文献)
浜田和幸『オバマの仮面を剥ぐ』
広瀬隆『アメリカ巨大軍需産業』