「残存歯数と死亡リスクの関係が明らかに 東京医科歯科大学の研究」
残存歯数と死亡リスクの関係が明らかに 東京医科歯科大学
「・東京医科歯科大学は、口腔の健康状態と死亡がもっとも頑健な関連性を示すことを発表した。
・これまで、口腔の健康と複数の健康との関連は明らかになっていなかった。
・今回の研究により、口腔の健康状態を良好に保ち歯科補綴治療により回復させることが、
死亡や機能障害リスクの低減に寄与することが示唆された。」
『はじめに:東京医科歯科大学は9月20日、口腔の健康状態と死亡がもっとも頑健な関連性を示すことを発表した1)。
このことにより、残存歯数が死亡リスクと強く関連することなどが明らかになった。
この研究は、東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野講師の木野志保氏と東北大学や千葉大学、
米国のボストン大学、国立保健医療科学院との共同研究によるもの。
研究成果は、J Prosthodont Resに掲載された。2)
1)「 口腔の健康と健康状態・ウェルビーイングとの関連の網羅的な検証研究 」
―アウトカムワイド・アプローチを用いた縦断研究による解明―(東京医科歯科大学)
multiple health conditions: An outcome-wide approach. J Prosthodont Res. 2023 Aug 11. doi: 10.2186/jpr.
JPR_D_23_00091. Online ahead of print. PMID: 3757427
口腔の健康と複数の健康との関連はこれまで明らかになっていない
口腔の健康とさまざまな全身の健康およびウェルビーイング3)との関連は、
これまでに数多く報告されているが、過去の研究では口腔の健康状態と
単一の健康状態との関連を検証したものであった。
また、これまでの研究では結論が一致しないことがあり、
意見が分かれる傾向にあった。そ
こで研究グループらは、アウトカムワイド・アプローチを用いて、
口腔の健康状態と複数の健康、ウェルビーイングの指標との関連を
同時に網羅的に検証することを目的として研究を行った。
3)ウェルビーイング:身体的、精神的に健康な状態であるだけでなく、
社会的、経済的に良好で満たされている状態にあることを意味する概念のこと
残存歯が少ないと死亡リスクが高いことが明らかに
研究の対象は、26市町村に在住する65歳以上の高齢者。2010年、2013年、2019年における日本老年学的評価研究の15,905名分の縦断データおよび、日本老年学的評価研究と紐づけた32,827名分の2019年の介護保険データを使用した。また、口腔の健康状態は、以下の5つに分類した。
① 20歯以上 ② 10~19歯で歯科補綴あり ③ 0~9歯で歯科補綴あり ④ 10~19 歯で歯科補綴なし ⑤ 0~9 歯で歯科補綴なし
2010年の人口統計学的情報等を考慮した上で、2013年の口腔の健康状態と、2019年の身体や認知・精神的健康、主観的ウェルビーイング、利他的行動、健康行動などを含む35の健康とウェルビーイングの指標との関連を検証した。その結果、歯が20本以上ある人に比べ、20本未満の人は6年後の死亡リスクが10~33%高く、身体的な機能障害のリスクが6~14%高いことが明らかになった(図1)。
さらに、歯が20本未満の人は、外出の頻度が少なく、野菜や果物を食べる量が少ない傾向にあった。また、残存歯が0~9本で歯科補綴を使用していない人は、重度の身体的な機能障害を有する可能性が高いかつ知的活動が少なく、絶望感を感じる割合が高いことが明らかになった(図2)。
このことから、65歳以上の高齢者において、残存歯が20本以下であることは死亡および身体機能障害リスクの上昇と関連していたことがわかった。また、口腔の健康状態を良好に保ち歯科補綴治療により回復させることは、死亡や機能障害リスクの低減だけでなく、ウェルビーイングの増進に寄与することも示唆された。
***
今回の研究で、口腔の健康は、死亡率や身体的機能障害リスクの低減、知的能力の維持、外出頻度、食生活の維持に寄与する可能性があることが明らかになった。歯科医療従事者として、より1本でも多くの歯を残すことや、歯科補綴の重要性を再認識できる。この結果が、1人でも多くの患者さんに伝わり、口腔の健康状態を良好に保つきっかけに繋がることを願っている。
執筆者
WHITE CROSS編集部
』
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