闇バイトによる特殊詐欺の検挙数が増加している。龍谷大学矯正・保護総合センター嘱託研究員の廣末登さんは「中国や台湾の犯罪集団が闇バイトに関わるようになり、事態は非常に深刻化している。一度関与すると簡単には抜けられず、命の危険すらある」という――。
警察が発表した「闇バイト」の驚くべき実態
4月3日、警察庁が発表した組織犯罪情勢によると、暴力団勢力は、警察庁が統計を取り始めた1958年以降、初めて2万人を下回った。一方で、メンバーらがSNSでつながり離散集合を繰り返し、犯罪を通して資金獲得を行う「匿名・流動型犯罪グループ(以下トクリュウ)」の活動が深刻化していることが明らかになった。
「https://www.youtube.com/watch?v=yKcdSFNlwxg
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2024年、摘発されたトクリュウは、暴力団勢力の8249人を超える1万105人だった。このうち約4割(3925人)は、SNS上の「闇バイト」に応募して犯罪に関与していた。罪種別では、口座を転売するなどの犯罪収益移転防止法違反が3293人、詐欺2655人、窃盗991人、薬物事犯917人、強盗348人などとなっている。ただ、摘発できているのは、特殊詐欺などの実行役が多く、「主犯または指示役」は1割程度(1011人)にとどまっているのが現状だ。また、犯罪の収益がマネーロンダリングされており、追跡が困難なケースが多いことも課題である。警察庁の楠芳伸長官は3日の記者会見で「暴力団と匿名・流動型犯罪グループが互いに一定の関係を保ちながら、さまざまな資金獲得犯罪を敢行している実態がある」と述べている。警察はアングラ化した暴力団とトクリュウが一部で連携していると考えられるとみているのだ。この点について、筆者は著書などで、元暴アウトロー(暴力団離脱後に社会復帰できず違法な資金獲得活動を行う者)や暴力団偽装離脱者等の存在を指摘している。
ドラマのような「潜入捜査」が現実に
こうした中、警察庁は、いわゆる「仮装身分捜査」の実施要領を策定し、全国の都道府県警察本部長に通達している。