・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野の研究チームが
「マウステープ」の流行に警鐘を鳴らす システマティックレビューを発表。 ・閉塞性睡眠時無呼吸の患者における マウステーピングの安全性や有効性とは? |
はじめに
ロンドン健康科学センターのBrian Rotenberg氏らの研究グループは5月21日、閉塞性睡眠時無呼吸の患者におけるマウステーピングの安全性と有効性を明らかにするシステマティックレビューの結果を公表した。
研究成果は、PLOS Oneに掲載された1)。
1)Rhee J, Iansavitchene A, Mannala S, Graham ME, Rotenberg B. Breaking social media fads and uncovering the safety and efficacy of mouth taping in patients with mouth breathing, sleep disordered breathing, or obstructive sleep apnea: A systematic review. PLoS One. 2025 May 21;20(5):e0323643. doi: 10.1371/journal.pone.0323643. PMID: 40397877; PMCID: PMC12094774.
SNSで流行の
「マウステープ」
科学的根拠とは?
近年、TikTokなどのSNS上で、
睡眠中に口をテープで閉じる「マウステープ」。
口呼吸の改善や睡眠の質の向上、
さらには口腔衛生の改善、
アンチエイジングにまで効果があるとされ、
世界で多くのインフルエンサーや著名人が推奨しているという。
このような状況を受け、
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野の研究チームは、
この流行に注意喚起を行う
システマティックレビューを発表した。
科学的根拠なく推奨されている
可能性を指摘
研究チームは、
PRISMAガイドラインに基づき、
1999年2月〜2024年2月までに行われた
マウステープに関する研究を
MEDLINEやEmbase、Google Scholar
などのデータベースから網羅的に検索。
「マウステーピング」「睡眠」「口呼吸」
などのキーワードで文献を抽出し、
最終的に基準を満たした10件の研究
(対象患者合計213名)を詳細に分析した。
その結果、
10件の研究のうち
2件では、
軽度の閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)患者において、
無呼吸低呼吸指数(AHI)や
酸素飽和度の低下といった指標で、
統計的に有意な改善がみられた。
一方で、
多くの研究ではマウステープによる
治療効果は得られなかった。
さらに、
鼻腔が閉塞している場合に、
テープによって
気道が完全に塞がれてしまう
窒息のリスクなど、
潜在的な危険性
についても示唆された。
このことから、研究グループは、
SNSで科学的根拠なく推奨されている
ことを懸念しており、
その効果は
必ずしも科学的に証明されたものではない
とコメント。
「睡眠中にマウステープ
で塞ぐことは危険であり、
特に睡眠時無呼吸症候群の
自覚がない患者にとっては、
症状を悪化させ、
深刻な健康被害のリスクを高める」
と述べた。
***
歯科臨床の現場において、患者からマウステープについて相談される機会がある場合には、
今回の研究結果に基づき、現時点でのエビデンスを丁寧に説明することが重要である。
しかし、今回の研究で対象とした論文のみでは、得られていない結果もあることから、さらに質の高い研究が進むことに期待したい。