ニュース 2023/11/15 カテキンとフッ化物の組み合わせが酸の産生を効率良く抑制することを発見 東北大学 WHITE CROSS編集部 | きたざわ歯科 かみあわせ研究所
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ニュース 2023/11/15 カテキンとフッ化物の組み合わせが酸の産生を効率良く抑制することを発見 東北大学 WHITE CROSS編集部


ニュース 2023/11/15

カテキンとフッ化物の組み合わせが

酸の産生を効率良く抑制することを発見

原著は英語ですが、図は原著ご覧ください。

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東北大学

WHITE CROSS編集部

「・東北大学は、カテキンとフッ化物の組み合わせが口腔内微生物による酸の産生を効率良く抑制するための方法を発見したことを発表した。・これまでの研究では、カテキンとフッ化物それぞれが酸産生を抑制することが明らかになっていたが、双方の組み合わせによる効果は検証されていなかった。・今回の研究により、カテキンとフッ化物の組み合わせは、S. mutansによる酸の産生を効率良く抑制することが判明した。
はじめに
東北大学は11月2日、カテキンとフッ化物の組み合わせが口腔内微生物による酸の産生を効率良く抑制するための方法を発見したことを発表した1)。このことにより、う蝕予防法の新規開発に貢献できる可能性が示唆された。この研究は、東北大学大学院歯学研究科口腔生化学分野の髙橋信博教授、鷲尾純平准教授、安彦友希助教ら研究グループと四川大学華口腔医学院と共同研究によるもの。研究成果は、 Caries Researchに掲載された2)。
1)カテキン×フッ化物でむし歯の予防効果アップ!口腔細菌がつくり出す「酸」を効率良く抑制するための方法を発見 (東北大学)
2)S Han, J Washio, Y Abiko, L Zhang, N Takahashi. Green tea-derived catechins suppress the acid productions of Streptococcus mutans and enhance the efficiency of fluoride. Caries Research. 2023 Sep 12.
doi: 10.1159/000534055. Online ahead of print. PMID:3769935

「フッ化物」と「カテキン」の組み合わせで酸産生の抑制効率が向上するか検討
う蝕は、口腔の健康に影響を及ぼす主要な要因の1つであり、口腔内の微生物が糖を利用し、代謝産物として排出された酸によって脱灰することで進行する。そのう蝕予防においては、一般的に広く用いられているフッ化物が、歯の表面を修復、強化することに加え、微生物の酸の産生を抑制する働きをもつと広く知られている。一方カテキンには、抗酸化作用や抗炎症作用など、さまざまな健康効果があることが知られている。さらにこれまでの研究で、緑茶と同等濃度のカテキンは、細菌を死滅させないものの、酸産生を抑制することが明らかになっていた3)。今回の研究グループらは、微生物の酸産生を抑制する効果がある「フッ化物」と「カテキン」を組み合わせることにより、酸産生の抑制効率が向上するかどうかを検討した。
3)「緑茶カテキンは口腔レンサ球菌の酸産生を抑制する -緑茶カテキンの虫歯予防効果に期待-」(東北大学)
酸性環境で酸の産生がより効率的に抑制
まず、緑茶由来のカテキンは複数あることから、各種カテキンが代表的なむし歯関連細菌である Streptococcus mutans(以下、S. mutans)の酸産生をどの程度抑制するかを検討したところ、カテキンの構造の違いが酸産生抑制効率に影響することが予想された(図1)。そこで、各種カテキンと細菌細胞膜に存在する糖取り込み酵素(酵素 II 複合体:EIIC)との相互作用を検討するために、分子ドッキングシュミレーション4)を行った。その結果、ガロイル化カテキンの方が効率的に EIIC に結合し、糖の取り込みを阻害することが示された。さらに、カテキンとフッ化物を組み合わせると、S. mutansによる酸の産生が、より効率的に抑制されることが明らかになった。中でも、特に酸性環境においてはその効果が有意に高まった(図2)。
今回の研究結果により、酸性環境では、フッ素イオンが細菌内に流入しやすいことから、カテキンが細菌細胞膜に存在する F-排出チャネル(Fluc チャネル5)タンパク質)を不活化し、F-の細胞内蓄積を引き起こすことで酸産生抑制が相乗的に増強することが仮定された(図3)。
このことから、カテキンとフッ化物の組み合わせにより、S.mutansにおける酸の産生を効率良く抑制するための方法が発見されたことが明らかになった。
4)分子ドッキングシュミレーション:低分子と生体高分子間の相互作用や結合時の安定性をコンピュータ上でシミュレートし推定する手法
5)Fluc チャネル(Fluoride channel):細胞内に蓄積した過剰なフッ素イオンを排出するための細胞膜イオンチャネル

今回の研究の展望としては、S.mutans以外の口腔内微生物に対しても同様の効果があるかについての検討が必要であると考えられる。また、日々の臨床で応用するためには、カテキンとフッ化物の最適な配合比率や供給形式についても検討が必要かもしれない。新たなう蝕予防のポピュレーションアプローチとして、カテキンとフッ化物の組み合わせが実際の口腔内で効果的かどうか、さらなる研究の続報に期待したい。
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。」